2013.02.26

【WBC】侍ジャパン2009「若きエースたちが見た松坂大輔」

  • 中村 計●取材・文 text by Nakamura Kei
  • photo by Taguchi Yukihito

第2ラウンド初戦、キューバ戦で好投した松坂大輔【プレイバックWBC2009】

 3月15日のキューバ戦で松坂が投じた86球は、野球ファンに永遠に語り継がれるだろう。日本の背番号18が見せた、芸術ともいえる投球術と、恐るべき精神力。その背中を見た次世代のエースは何を感じたのか?今、魂が受け継がれていく。

 ペトコ・パークの会見場に姿を現した松坂大輔は、案の定、すべての感情を押し殺したような面持ちをしていた。そんな表情が緩(ゆる)んだのは、同時通訳機のイヤホンを耳にセットしたときだった。

《ダイスケ、OKですか? ダイスケ、ダイスケ、聞こえていたら右手を上げてください》

 サンディエゴで行なわれた第2ラウンドの初戦、キューバ戦後の記者会見でのことだ。松坂は、日本語訳を担当していた年配の女性が、たどたどしい日本語で、しかも妙になれなれしく下の名前を連呼するものだから、つい噴き出し、ようやくいつもの人なつっこい笑顔を浮かべた。

 その様子は、前回の会見のときとは対照的だった。

 東京ドーム・第1ラウンド。松坂は、第2ラウンド進出をかけた韓国との初戦を任された。だが初回、味方が3点を先制した直後に、4番の金泰均(キム・テギュン)に特大の2ランを浴びてしまう。その後の4イニングはぴしゃりと抑え、14-2でコールド勝ちしたものの、松坂ほどの投手が、この内容に納得しているはずがなかった。

 その証拠に、会見場にやってきた松坂は最初からニヤついていた。普段から、ホームランを喫した直後などに悔しさをカモフラージュするためにマウンド上でよく見せるあの微苦笑だ。快投したときは、さも当然かのように感情を封じ、不本意な結果となったときは無理にでも笑ってみせる。そこに、松坂の負けん気の強さが見え隠れしている。

 このときも、もちろん、心の内は反対だった。松坂は言う。

 「今回、置かれている立場からすると初回からビシッといかないと。そういう意味では、何て言うか……(自分自身に)頭にきていますね」

 3年前は、上原浩治や渡辺俊介がいた。だから松坂は、自分のことさえやっていればよかった。だが今回は、チーム結成時に山田久志投手コーチからはっきりと告げられていた。

「彼しかいませんからね。ちゃんと言いましたよ、『キミがエースとなって引っ張ってくれよ』と」