名コーチが嘆く、プロ野球キャンプ早々にリタイヤ選手が出るのはなぜか
名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第17回
プロ野球の春季キャンプが目前に迫り、いよいよ球春到来を実感する。選手にとっての"正月"ともいえるキャンプだが、昨今は開幕が早くなったために早い段階で実戦練習が行なわれるようになった。そのため、自主トレやキャンプの内容も随分と様変わりしてきた。その意味と重要性を、名コーチとして球界を知り尽くす伊勢孝夫氏に語ってもらった。
(名コーチが指南。平凡な選手がプロになるための秘訣 第16回)
2月1日、プロ野球春季キャンプが一斉にスタートする かつて自主トレといえば、特に1月後半は球団のコーチが練習メニューを組み、指導を行なっていた。いわば、ユニフォームを着ない全体練習だったわけだ。オフにトレーニングをせず、鈍った体のまま参加しても、1月後半の追い込みでなんとかキャンプに間に合わせることができた。
だが80年代の終わり頃から、選手会の強い意向でチーム関係者は一切タッチせず、文字通り選手だけの自主トレーニングとなった。
年俸の高い選手は、グアムなど海外に若手を引き連れて自主トレに励む。国内では、母校のグラウンドで汗を流す選手もいれば、チームの室内練習場などで体を動かす者もいる。
自主トレだから、どう過ごすかは選手たちの自由だ。ただ残念ながら、2月1日のキャンプ初日に十分に動けていない選手がいる。そういう選手は、ユニフォームの上からでも体ができていないのがわかる。
コーチとしてみれば、あくまで「体ができている」という前提」で練習メニューをつくっているわけだから、そうした選手はすぐに離脱を余儀なくされる。本人は悔しいだろうが、首脳陣にとってもこれほど痛いことはない。
自主トレ期間中、選手にやってきてほしいポイントはそれほど多くない。キャンプ初日からフリーバッティングでガンガン打つ必要はない。コーチの立場としてしっかり鍛えてきてほしい箇所は、肩と足の2つだけである。それ以外は、キャンプで鍛えていけばいいのだ。
肩と足、たったそれだけにもかかわらず、キャンプ早々にリタイヤする選手がいるのはなぜか?
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