エースとは何か? 菊池×則本の投げ合いで蘇った「11年前の対決」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

「前に飛ばしたら何かが起きるかもしれないんで、初回に限らず、ランナーがいるときには全部、三振を取るつもりで投げてました。ランナーが出てからギアを上げられていたのが今年だと思うので、ランナーが出てからはとにかく全力できました」

 菊池はこのピンチでインハイのストレートとアウトコースのスライダーを振らせて、ペゲーロをあっという間に追い込んだ。最後はボールゾーンへ逃げていく外のスライダーで空振り三振。続くウィーラーに対しても、膝元のストレートで見逃し、アウトハイのストレートを振らせて追い込み、外いっぱい、155キロのストレートにバットを出させず、見逃しの三振に斬って取った。言葉通り、得点圏にランナーを背負ってからギアを上げてみせての連続三振で窮地を乗り切り、菊池は難しい立ち上がりをゼロに抑えた。

 あとからマウンドへ上がった則本は、マウンドにしゃがみ込んでロージンバックの上に手を置き、心の中で何かを祈った。今シーズンの成績は15勝7敗、防御率は2.57。シーズン最後の登板で菊池を上回って4年連続で最多奪三振のタイトルは手にしたものの、勝ち星、防御率ともに、今年の則本は菊池に後れを取っていた。

 その則本の立ち上がり、2番の源田壮亮にデッドボールを与えて、ワンアウト1塁。スライダーが切れすぎて振りに来た源田の左太ももに直撃したのだが、振っているというバッテリーのアピールは認められず、3番の浅村栄斗を迎えた。その2球目、則本は内角高めのストレートを浅村に振り抜かれた。先制のツーランホームラン――エース対決、先に点を失ったのは則本だった。

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