貧打を変えた石井琢朗コーチの教え。カープ打線は7割の失敗を生かす

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 西田泰輔●写真 photo by Nisida Taisuke

【連載】チームを変えるコーチの言葉~広島東洋カープ打撃コーチ・石井琢朗(1)

 1980年以来、37年ぶりのリーグ連覇を果たした広島。昨年に引き続き攻撃陣が強力で、チーム打率、得点は12球団でも断トツだ。確かに、黒田博樹が抜けた投手陣も岡田明丈、薮田和樹と若い力の台頭があって健闘しているが、それ以上に打線の充実ぶりには目を見張る。もっとも、つい2年前、緒方孝市が監督に就任した2015年シーズンは、「貧打」「得点力不足」と言われていた。その年のオフ、守備走塁コーチから打撃コーチとなったのが石井琢朗だ。点を取れる攻撃陣に変えるべく、選手たちをどう指導したのか。その方法と考え方を聞いた。

2016年に広島の一軍打撃コーチとなった石井琢朗2016年に広島の一軍打撃コーチとなった石井琢朗 横浜で20年間、広島で4年間プレーし、通算2432安打を記録した石井は、12年限りで現役を引退。そのまま広島に在籍して3年間、守備走塁コーチを務めた。その間、当然ながら、野手たちの打撃も間近に見ている。そのなかで、各打者に対してどんな思いを抱いていたのだろうか。

「攻撃に関しては、常に守備目線で見ていました。カープの攻撃陣に対して自分が守っていると仮定すると『もう少し、こういう攻撃をしたら嫌なのに。もっと幅の広い攻撃をできるのに』と思うことが何度もあったんです。と同時に、チャンスで打席に入って『なんとしてもヒットで還さなきゃ』っていう気持ちが強すぎるなと。それは全然ダメじゃなくて、いいと思うんです。『よし、オレがここで決めてやる』って意気込んでいくのはいい。でも、なんの根拠もない自信とプラス思考で打席に入ったとしても、何も起きないんで......。常に100点満点を目指す必要はないんですよ」

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