どん底ヤクルトにも希望はある。ツバメの卵がようやく孵化し始めた (6ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 チャンスをもらった若手たちのシーズンは、まだ終わっていない。廣岡は二軍でホームラン1位、二塁打1位と長打力を伸ばしながら、打率も昨年より大きく上昇している。一軍での経験を無駄にしていないと、廣岡は言う。

「追い込まれてからヒットや四球が増えていることが大きいと思います。三振も多いですが、去年と比べれば納得できています。(大差でリードされた9回の打席で四球を選んだ)昨日の打席も、去年なら間違いなく一発狙っていましたけど、粘って出塁することで逆転もあります。雑なことはできないですし、同じ失敗は繰り返したくないですから。これまで一緒にやってきた選手(奥村や山崎)が一軍で活躍していますが、負けたくない気持ちはあります」

 7月27日、チームはバレンティンの2本の本塁打などで中日に大勝。中日との3連戦でヤクルトは31得点を挙げた。試合後、クラブハウス前での囲み会見でバレンティンは言った。

「主力選手たちケガで空いている穴を、若手が埋めてくれるようになりました。彼らの、何とかして塁に出ようとする気持ちが伝わってくるので、こちらも絶対にホームに還してやろうという気持ちが強くなります。いい相乗効果になっていると思います」

 囲み会見を終えて球場に戻ると、ベンチ裏にある鏡の前でバットを振る選手の姿があった。誰かと思ってのぞき込んでみると、西浦だった。少し離れたところからプロ13年目の大松尚逸がアドバイスを送っている。試合後の素振りは、球場の照明が落ちても続いた。

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