【イップスの深層】先輩の舌打ちから始まった、ガンちゃんの制御不能 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

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 16年間の現役生活でプロ通算63勝を挙げた日本ハムの元エース。ヒーローインタビューで「まいど!」と絶叫する定番のパフォーマンスで、全国区の知名度を誇っていた。

 そんな明るいキャラクターの岩本の野球人生には、常に「イップス」という影がつきまとっていた。

 野球における「イップス」とは、主に投げる動作について使われる言葉だ。症状は個人差があるが、もともとボールをコントロールできていたプレーヤーが、自分の思うように投げられなくなってしまうことを指す。症状が悪化すると、投球動作そのものが変質してしまうケースもある。もともとはゴルフ競技で使われていた言葉だったが、今やイップスの存在は野球やほかのスポーツでも市民権を得た感がある。

 アマチュアはもちろん、最高峰の技術を持ったプロの世界でもイップスに苦しむ選手は多い。現在は野球解説者として各球団の現場を回る岩本は先日、ある球団のレギュラー内野手にこう切り出したという。

「(右手の人差し指と中指を揃えて、親指にちょんちょんとつける仕草をして)『お前、持ってるやろ?』って聞いたら、『そうなんです』って答えてね。僕らはこのサインで(イップスかどうかを)確認するんです」

 プレーヤーの選手生命を蝕(むしば)む悪魔――。それがイップスなのだ。だからこそ、彼らはイップスに侵されているかどうかを「持ってる?」という言葉で確認するのだろう。

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