全治1年からの帰還。DeNA山崎憲晴ロングインタビューby村瀬秀信 (6ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

 リハビリの期間は決して楽なものではなかった。自分のいないチームがCS争いを演じ、若い選手たちが成長を遂げながら、劇的な試合をやってのける。

「確かに焦る気持ちがないといったら嘘になるし、つらい時期もありました。でもチームが上位を争ってくれていたことは、リハビリのモチベーションにもなりましたからね。勝手に『CSには絶対に間に合わせる』って思っていましたし(笑)。結果的に僕は出られなかったけど、9月には予定より早く二軍戦に復帰できて、最終戦でホームランも打てた。いい当たりではなかったけど、去年やろうとしたことが最後に1本という形になったから、まぁいいかって。

 確かに身体を大きくした時は飛距離を求めたところもありましたよ。でも今はそうじゃない。力じゃなくて、うまく道具を使っていいポイントで打てば、振らなくても勝手に飛んでいく......そういう感覚になりました。だから身体を大きくしたことも無駄ではなかったかなって。

 ただ、僕はやっぱり守備なんですよ。チームから離れている間、考える時間だけは山ほどありましたからね。その中で、"僕がこのチームの中で誰にも負けないものは何か"という原点に戻れました。この2年間、バッティングのことばかりが先行していましたが、僕は守備のペースが崩れると全部が崩れてしまう。守備が崩れた状態で打っていたとしても精神的に安定しないんです。

 もちろん一軍に残るにはバッティングが必要です。レギュラーだってあきらめていません。でも僕は昔から自分のことばかり考えている時よりも、チーム全体を見て、自分の居場所や『何をするべきか』を考えているときの方が結果も出るし、自分にとっても気持ちよく野球ができる。もう一度、守備固めからひとつひとつ登っていく。今はそれでいいんじゃないかなって」

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