元ホークス斉藤和巳が今だから話せる、復帰を目指した地獄の日々 (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News 協力●寺崎江月

個人的な達成感のためでは、つらいリハビリは続かない

――今振り返って、6年間もリハビリを続けられたのはなぜですか。

斉藤 またチームのためになりたいという思い。一軍で戦力になれるんじゃないかという気持ちだけです。勝利のために身を削って、マウンドに上がってみんなに喜んでもらいたい。チームの勝利のために――そこはまったく揺るぎませんでした。自分の個人的な達成感のためだったら、あのつらいリハビリは続けられなかったと思います。

――最後の6年間、一度もマウンドに立てず、厳しい声も耳に入ってきたのでは。

斉藤 タクシーの運転手さんに「ホークスの斉藤は、何しとるんや?」「あれだけ給料もらっといて、なんで投げない?」と言われたことが何度もあります。僕だと気づいてはいなかったと思いますが、似たようなことはたくさんもありました。

――批判的な声を聞いて、どんな気持ちになりましたか。

斉藤 素直に「そうだよな」と思って聞いていました。もちろん、悔しい気持ちはあるけれど、最後の6年間の気持ちは自分にしかわからないと思って割り切ったので。

――リハビリのつらさは本人だけがわかっていればいいと。

斉藤 そうです。もちろん理解してくれる人もいますが、自分の心の内を話してもわかってもらえるはずがないし、わかってもらおうと考えること自体が間違っている。厳しいことを言われるのは、プロ野球選手の宿命です。

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