ドラフト「強行指名」はなぜ起きるのか。履正社・山口のケースを追う (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

「山口の考えにブレはないようですから、(結論は)変わらないと思います。誰もルール違反はしていないんです。ただ、(下位で)指名するとこういうことになるのはわかっていたはずで......」

 慎重に言葉を選びながら語っていた岡田監督は、ドラフト以来繰り返してきた「信用問題ですから......」というフレーズを何度も口にした。

 JR東日本に対し、他球団のスカウトに対し、そして野球界に対しても筋が通らない。岡田監督の素直な思いだろう。

 ここであらためて今回の"山口騒動"を整理してみたい。

 昨年秋からベンチメンバーとなった山口は、今春から寺島成輝(ヤクルトドラフト1位)と並ぶ二枚看板に成長。春、夏とも堂々の成績を残し、最速146キロをマークする左腕に高い関心を示していたのがJR東日本だった。

 近年、田中広輔(広島)や吉田一将(オリックス)など、多くの選手をプロに輩出している社会人屈指の強豪だ。履正社からも一昨年のセンバツ準優勝の立役者、永谷暢章(投手)がこの春、同社に進んだ。

 JR東日本の堀井哲也監督と岡田監督は同い年であり、気心も知れている。そうしたふたりの信頼関係のなかで山口の話も進んでいったのだろう。ところが春以降の山口の活躍にプロの評価も高まり、本人もプロ入りの夢が広がっていった。そしてドラフトを前に出した結論は、3位以上ならプロ、4位以下ならJR東日本というものだった。

 この意向は、調査書の提出を求めた11球団のスカウトに岡田監督の口から伝えられ、面談の席でも各球団の関係者に伝えられた。

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