主演・大谷翔平の起用に見る
演出家・栗山監督「日本一へのシナリオ」 (5ページ目)
「もちろん、監督の期待に応えたいとは思います。でも、高校の頃から言われてきたのは、期待は応えるものじゃなくて"超えるものだ"ということ。おそらく『翔平はここまでやってくれるだろう』と監督が思う、そのもうひとつ上を行けたらいいんじゃないかなと思いますね(笑)」
7回表、3番DHの大谷に打席が回ってきたことでブルペンでの準備が間に合わず、8回は宮西尚生に託した。そして9回表、札幌ドームにアナウンスが響く。
「指名打者の大谷が、ピッチャー」
スタンドには地鳴りのような歓声が轟いた。ベンチ前でチームメイトが花道を作る中、大谷がベンチから出てくる。いつものようにファウルラインを左足でまたいで、マウンドで仁王立ちだ。大谷は言った。
「序盤からピッチャーを使っていたし、あるかもしれないとは思っていました。言われてビックリする状況でもないですし、言われたときにすぐ行ければと思ってましたね」
そして、投じた165キロ──期待に応えるのではなく、期待を超えるという大谷の、これがまさに真骨頂だった。
それにしてもこのCSファイナルステージ、ホークスは大谷に翻弄され続けた。第1戦では0−0の5回裏、ノーアウト満塁で前進守備を敷いた。バッターが足の速い西川遥輝だったことからダブルプレーは難しいという判断もあったのかもしれないが、ピッチャーの大谷を相手に1点を惜しんだ結果、西川に2点タイムリーを許してしまった。
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