ホークスを二刀流で圧倒。
大谷翔平が体現する「非常識な常識」 (2ページ目)
「今年は低めのああいう変化球の見送りができてなかったんですけど、最終戦でもそこが出てしまいました」
これが1年前のことだ。
去年のいま頃の大谷は、ピッチャーとしての実力が際立ち、バッターとしての大谷の存在感が薄くなって、『二刀流は失敗じゃないか』とまで言われていた。そのピッチャーにしても、最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲得しながら、ここ一番では勝ち切れないピッチャーだと言われた。高校最後の夏は岩手大会の決勝で敗れて甲子園出場を果たせなかった。去年は優勝したホークスだけに分が悪く、CSではマリーンズに打たれて、日本一の頂からの景色を確かめることはできなかった。大舞台で勝てない......それが1年前の大谷を包む空気だった。
ところが、である。
わずか1年で、大谷はそんなトラウマを払拭し、大事な試合でことごとく結果を残してきた。昨秋、プレミア12の韓国戦で2度までも圧巻のピッチングを見せたことを入り口に、今シーズンも優勝の行方を左右する天王山のホークス戦でチームを勝利に導く気迫あふれるピッチングを見せ、リーグ優勝を決めたライオンズ戦では完封劇を演じ、胴上げ投手を務めた。
バッターとしても覚醒し、ピッチャーとして先発する試合でも打順の中に入ることが珍しくなくなった。オールスターではホームラン競争で優勝し、シーズンを通して22本のホームランを放った。もはや1年前の空気を思い出すのは容易なことではない。この1年で、大谷のバージョンアップは凄まじい速度で繰り返された。
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