ひと振りで試合を決める男・エルドレッドの「カープ愛、日本愛」 (3ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 当たりが止まっても辛抱強く起用し続け、エルドレッドも監督の期待に自慢の一発で応えてきた。

 日本での成功の裏には、日本を愛する姿勢だけでなく、首脳陣の指導に対して熱心に耳を傾ける素直さがある。ときには通訳に打撃の相談をすることもあった。在籍年数を重ねることで、責任感も増してきた。チームを思う気持ちは、日本人並み、いやそれ以上と言っても過言ではない。

 夏場、右太もも裏の故障が癒えても、外国人枠の影響ですぐに一軍昇格とはならなかった。それでも冷静に現実を受け止め、腐ることなく目の前の練習に取り組んだ。また、日本人の若手選手にバッティング指導も行なっていた。堂林翔太もそのひとり。「バットの出し方、角度などを教えてもらった」とエルドレッドの助言に感謝した。

 好調だった打線が8月に入り一時期停滞すると、緒方監督は満を持してルナとエルドレッドを入れ替えた。8月14日のDeNA戦、復帰初戦で三振、三振、本塁打、三振とエルドレッドを象徴するかのような結果に終わった。だが、その1本が決勝点となり、チームを勝利に導いた。

「自分はパワーヒッター。打線のなかにいると、こういうことが起きる」と胸を張った。緒方監督も「カントリー(エルドレッドの愛称)ならこういう攻撃ができる。今日はカントリーが大きな仕事をしてくれた」と手放しで喜んだ。とにかく、エルドレッドが持つ一発長打の効力は計り知れない。

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