ヤクルト逆転CS滑り込みへ、高校野球みたいな「チーム一丸」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ヤクルトの真中満監督は、今年春の沖縄キャンプでこんなことを言っていた。

「選手たちには、どんな状況になっても優勝を目指す意志を持っていてほしい。『この戦力じゃ厳しい。今年は無理だ』と勝手に判断をすることはしないでほしい」

8月は4勝0敗と好投したエースの小川泰弘8月は4勝0敗と好投したエースの小川泰弘 セ・リーグ連覇を目指したヤクルトは開幕4連敗とつまずくと、そこから苦しい戦いの日々が続いた。チーム防御率は5点台が長く続き、抑えのオンドルセクが途中退団。主力の畠山和洋、川端慎吾、雄平がケガで戦線離脱。8月10日には山田哲人までが死球禍により登録抹消。昨年、チームを優勝に導いた主力が次々とラインアップから消える事態に陥(おちい)った。

 しかし、こんな非常事態のなかにあっても、ヤクルトの選手たちは誰ひとりとして「今年は無理だ」と決めつけることはしなかった。

 主力をごっそりと失いながらも、8月は15勝9敗と勝ち越し、9月1日には3位のDeNAに1ゲーム差と迫るなど、クライマックスシリーズ(CS)進出も見えてきた。

 坂口智隆は「主力が多く欠けたことでチームの雰囲気が暗くなることもなかったし、逆にゲームに出られる選手が増えたことで、いい雰囲気で試合に臨むことができました」と話してくれた。

 坂口は今シーズン、オリックスから移籍。長く続いた不振から抜け出し、ここまで(9月5日現在)チーム最多出場を果たしている。坂口が続ける。

「僕も含めて『ポジションをなんとか奪ってやろう』という選手ばかりでしたからね。抜けてしまった主力と同じことはできないけど、逆に泥臭さというかね......。きれいな形でなくても1点を取り、相手より失点を少なくして守り切る。必死にやってきた結果、チームがなんとか粘れることができたと思います」

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