2016.06.08

BCリーグで戦う17人の元プロ野球選手、それぞれの「存在意義」

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

「手、痛てーよ。怖くて言えねえけど」

 キャッチャーミットを外した左手を振りながら、控え投手がカメラマン席に戻ってきた。メディアの少ない独立リーグの試合では、しばしばここが彼らの控え場所になっている。控え投手のミットに重い球を投げ込んでいたそのピッチャーは、味方の攻撃が終わるのを確認すると、マウンドへ向かっていった。確かに傍目から見ても、彼の球はこのレベルでは他を圧倒していた。

 江村将也――この元ヤクルトの選手の名前を聞いただけでピンとくる野球ファンはどれだけいるだろうか。NPB(日本プロ野球)での通算成績は3勝1敗。一度だけ彼の名前が大きく報じられたのは、ルーキーイヤー(2013年)の初勝利のときだけだった。

今年から福島ホープスでプレーする元ヤクルトの江村将也

 この試合で江村は、広島のレジェンド・前田智徳に死球を当て、乱闘寸前の騒ぎに。結局、この死球で前田は左手首を骨折し、そのまま回復することなくこの年限りで現役を引退した。この死球が影響したわけではないだろうが、江村は年ごとに成績を落とし、3年目は一度も一軍登板することなく、戦力外となった。

 オフのトライアウトでも声がかからなかった江村だったが、不完全燃焼を感じていたのだろう。今シーズン、ルートインBCリーグ・福島ホープスのユニフォームに袖を通した。

 福島には、彼のほか兼任監督の岩村明憲を筆頭に、6人の元NPB選手が在籍している。江村のチームメイトだった佐藤貴規もそのひとりだ。兄・由規のいるヤクルトに育成選手として入団した元甲子園のスラッガーも、結局、支配下登録はならず、3年で見切りをつけられている。