一軍初昇格の平沢大河を「一流の野球選手」にする大村流の人間教育 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 二軍とはいえ、高卒1年目でショートを守っていることを考えれば、じつに魅力的な数字が並んでいる。「一軍で試してみては......」と思ってしまうのだが、平沢はじつに冷静に現状を受け止めていた。

「自分のなかでは早く一軍に行きたいという考えはありません。まずはやるべきことを続け、確かな実力をつけることが大事だと思っています。たとえば、バッティングでは甘いボールをファウルにしてしまったり、確実性に欠けています。守備についても同じです。ただ、それらができるようになれば、今すぐというわけではないのですが、一軍に行けると思っています」

 そんな平沢をチームはどう育成しようと考えているのか。大村巌二軍打撃コーチに聞いてみた。

「ここまでの数字だけを見れば『それ一軍だ!』というマスコミやファンがいるでしょうし、1年や2年なら結果を出せるかもしれません。実際にプロの打者としてすでにできていることは、いくつかあります。でも僕たちは10年から15年の長期的なスパンで考えています。平沢はまだ成長過程なので骨格も変わってくる。だから、ハードなことはできないし、フォームを固めるということもない。今は打者としてタイプを決めずに、すべての能力を出せるような環境を整えている段階なんです」

 さらに、「技術の成長と並行して、これから"一流の野球選手"になるための土台づくりをしています。数字だけの選手にはしたくない」と大村コーチは言葉に力を込めた。

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