プロ野球の危機だから胸に響く「スパーキー・アンダーソンの金言」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

 そこで "伝説の名将"スパーキー・アンダーソンの金言をいくつか紹介したい。

 1994年秋、メジャーリーグは選手会によるストライキのためにシーズンが途中で打ち切られ、第二次世界大戦中でも開催されたワールドシリーズも中止に追い込まれた。翌年、1カ月遅れでシーズンが開幕したが、今度はファンが野球観戦をボイコットする事態に陥(おちい)った。サンディエゴでは開幕というのに集まった観衆は7048人。ピッツバーグも7468人だった。

 冒頭の言葉は、当時デトロイト・タイガースの監督だったスパーキーが、アナハイムの球場で記者に囲まれ、信じられないぐらい閑散としたスタンドを見回してから発せられたものだ。野茂英雄がサンフランシスコでメジャー初登板を果たす数日前のことだったと記憶している。記者から「野球の危機」についての質問が飛び、スパーキーは熱い口調で話し続けたのだった。

「野球はファンタジーなんだ。野球のゲームは短い時間にしか存在しない。だから、リアルではないんだ。朝9時から夕方5時まで、70歳まで一生懸命働く。それがリアルってやつだ」

 威厳ある表情はもちろん、メジャー史上初めて両リーグでワールドシリーズを制した監督の言葉には説得力があり、当時、メジャーが直面する未曾有の不人気に不安を感じていたが、「スパーキーが言うなら間違いない」と妙に安心したことを覚えている。事実、この年、メジャーは野茂という新しいスーパースターの登場や、カル・リプケンJr.の連続試合出場記録というセレブレーションもあり、徐々にファンからの信頼を取り戻していった。

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