タオルを振る京大プロ投手「田中英祐よ、もっと無責任にやれ!」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 70歳の名伯楽・小谷コーチは苦悩する田中の現状をそう明かした。

「我々が説明したことを、頭のなかで理解できているんですよ。やっぱり頭はすごくいい。ただ、実際に体を動かすとなると、自分の考えている通りに動いてくれない。頭と体が合っていないんだな」

 田中にいったい何があったのか?

 プロ入りした昨春、田中は一軍キャンプからプロ生活をスタートした。連日、「京大クン」の名前はメディアを通じて流れていたが、開幕を前に田中は二軍降格を通告される。その際、コーチからこんな言葉を掛けられたという。

「一軍は技術を持っている人が、それで勝負するところだから。それだけの技術がお前にはまだなかった。もう一度、下で練習してきてほしい」

 この言葉を胸に刻み、田中は「次に(一軍へ)上がるときは技術、メンタル、いろんなものを持った上で上がらないといけない」と決意する。

 シーズンの滑り出しは順調そのものだった。イースタン・リーグ初登板となった3月29日のDeNA戦で7回を投げ、被安打2、奪三振6で無失点。大ベテランの三浦大輔と投げ合った末に、勝利投手になった。さらに続く4月7日の西武戦も7回無失点で勝利投手に。2試合続けて無失点の快投で、一気に一軍昇格をたぐり寄せた。

 4月29日には本拠地・QVCマリンフィールドでの西武戦でプロ初先発、初登板を飾る。「人が多くて驚いた」と本人も語るように、3万100人の大観衆に見守られての初登板は制球が定まらず、初回にいきなり4点を失う苦しい展開。3回を投げて被安打6、四球3、失点5という結果で黒星デビューとなった。

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