燃え尽きてもなお黒田博樹がマウンドに上がる「新たな使命感」 (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Mehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 昨年のオフはヤンキース残留、米国内の移籍、広島復帰、現役引退の4つの選択肢だった。そして「広島復帰」の道を選んだ。広島のファンだけでなく、日本全国のファンから歓迎され、注目を集めた。

 そして期待に違わぬ投球を見せた。07年まで広島で見せていた力強い直球で押すスタイルから、投球は円熟味を増した。カットボールやツーシームを両サイドに投げ分けながらストライクゾーンを目いっぱい使い打ち取っていく。マウンドでの立ち居振る舞いが、7年間メジャーリーグで結果を残してきたことの何よりの証明となった。

 6月までに6勝を挙げ、オールスター戦にはファン投票で選出された。だが、5月の右足くるぶし付近の炎症による登録抹消に続き、7月には右肩炎症により2度目の登録抹消を味わった。

 日本の蒸し暑さなど7年過ごした米国との違いに適応することは容易ではない。40歳の体は悲鳴を上げる寸前だった。

 それでも今季、黒田は26試合に先発し、11勝8敗。防御率2.55の成績を残した。ファンは「現役続行」を疑わなかった。それどころか、米球界復帰を不安視する声まで聞かれた。だが、球団関係者や担当記者の中では「引退するのではないか......」という声が上がっていた。

 08年からドジャースと結んだ複数年契約の最終年となる10年から「いつ最後の試合となってもいい」という気持ちで投げてきた。だからこそ球団側が複数年契約を提示しても、単年契約を希望した。そういう男だ。

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