田中将大から則本昂大へ受け継がれた「1勝への執念」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 4月18日、強い風が舞う仙台。

 首位を走るファイターズを相手に、則本が今シーズン、4度目のマウンドに上がった。「いろんな方向から吹いていた」(則本)というやっかいな風が、則本の仕事の邪魔をする。初回、則本のボールは高く浮いた。とりわけストレートのコントロールが定まらない。2番の谷口雄也にチェンジアップをセンター前に運ばれ、3番の田中賢介を歩かせる。そして4番の中田翔に高めのストレートを強振され、三塁線を破るタイムリーヒットを打たれた。則本は立ち上がり、いきなり 先制点を与えてしまう。

 じつは今シーズン、則本は腕をタテに振ることを意識している。

 スライダーを投げていると、ピッチャーというのはどうしても右ヒジが下がり、腕の振りが横振りになってくる。空振りの取れる速いスライダーを武器に、プロ入り後の2年間で29勝を挙げてきた則本だったが、横振りのフォームではヒジに負担もかかる。今年のオープン戦でスライダーを封印してチェンジアップを磨いてきたのは、タテに叩き下ろす右腕の軌道を身体に染み込ませるための工夫だった。

 2回裏、ギャビー・サンチェスの逆転2ランが飛び出し、イーグルスが2-1と逆転した4回表のマウンド。則本はワンアウトから7番のブランドン・レアードに、レフトスタンド中段へ突き刺さる同点アーチを浴びてしまう。打たれたのは、この日、頼りにしていたチェンジアップだった。試合後、則本はこう言っていた。

「今日はフォームがバラバラで、いろんなことを気にしすぎました。フォークも使えなかったし、チェンジアップはホームランを打たれて、内容はほぼゼロに等しかったですね」

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