現役最後の日、稲葉篤紀が流した涙の本当の理由 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Isida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 現役最後の日、試合終了を待たずにあふれた涙の理由を、稲葉はこう説明した。

「チームのみんなが一生懸命で、最後の最後まで、諦めていなかった。その姿を見ていたら、こらえ切れなくなって……」

 ファイターズが北海道に根を下ろして、ちょうど10年。稲葉もファイターズで10年の時を過ごした。

 そして、北海道の人の心を捉えたのが“稲葉ジャンプ”だった。

「(稲葉ジャンプは)僕の空気までも変えてくれた。調子が悪い時でも打てるんじゃないかと思わせてくれた。世界中を見ても、ああいう応援はないんじゃないかと思います」

 稲葉ジャンプは札幌ドームを揺らす。

 ひとりの力ではびくともしない巨大な建造物を、みんなの力で揺らす高揚感――あの快感は、もう二度と味わうことはできない。

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