金子千尋は国内かメジャーか。混乱を招いたFA制度の矛盾

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そのニュースは、驚きを持って受け止められた。

 オリックスの金子千尋(31歳)が、国内FA権の行使を宣言したのである。

 シーズン終了後、サンフランシスコでワールドシリーズを観戦したことが報じられ、今の金子の視野にはメジャー行きも含まれているのだということが公となった。だから、もしこのオフ、金子がチームを出る決断を下すとしたら、ポスティングシステムによるメジャー移籍が有力なのではないかというのが最近の風潮だった。だから、国内FA権は行使しないだろうというのが大方の予想だったのである。

メジャー移籍を希望していると伝えられた金子千尋だが、国内FA権を行使メジャー移籍を希望していると伝えられた金子千尋だが、国内FA権を行使

 しかし、金子は国内FA権を行使した。

 それは何を意味するのか。金子はこうコメントしている。

「すべての可能性を考えたいと思ったので、こういう決断になりました」

 つまり、オリックス残留を含む日本の12球団、メジャーの30球団、あわせて42球団にこのオフ、獲得のチャンスを与えたい――それが金子のシンプルな発想だろう。過去、何人かの選手が「もう1年待てば......」「来年には......」と、球団から移籍に有利な権利を取得するまでのもう1シーズンの我慢を勧められ、それを拒む姿を見てきた。傍から見れば1年は長くなくても、選手にとっての1年はあまりに 長すぎる。

 このオフが金子の売り時であることは、誰が見ても明らかだ。金子が望んでいるのは、今の金子千尋に対して、日米42球団がどんな評価をしてくれるのかを確かめたい、ということではないだろうか。

 にもかかわらず、一部では今回のポスティングシステムと国内FAの併用が、"抜け道"だとか"裏ワザ"、あるいは"オリックスへの脅し"といったネガティブな表現を用いて報じられている。確かにオリックスがこのオフ、何らかの理由で認めるつもりだったポスティングを認めないといったん方針を転換したことが事実だとすれば、それを覆(くつがえ)すための方法論としての併用を、裏で糸を引く誰かに入れ知恵されたのかもしれない。ただ、金子が言う「すべての可能性」とは、シンプルに考えれば、以下の3つの条件を並べて比べたいということだ。

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