セ・リーグに大問題。MVPの該当者なし!?

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

セ・リーグMVP問題を考える(1)

「うーん、誰だろう......名前が浮かんでこない」

 先日、ある巨人OBの解説者と今年のセ・リーグMVPについての話をしていた時のことだ。いつもなら、あの選手、この選手と名前が挙がってくるのだが、今年はなかなか出てこない。あれもダメ、こっちも厳しいとなって、結局、有力候補を挙げてもらうことはできなかった。

現在、11勝をマークし、防御率はリーグトップの菅野智之だが......現在、11勝をマークし、防御率はリーグトップの菅野智之だが......

 MVPは優勝チームから選出されることが多い。特に規定があるわけではないが、日本では個人の成績よりも優勝にどれだけ貢献したかが重要視されている。

 過去10年を振り返っても、優勝チーム以外から選ばれたのは、昨年、王貞治氏の記録を抜きシーズン60本塁打を放ったウラディミール・バレンティン(ヤクルト)ただひとり。今年は度肝を抜くような大記録を達成した選手はおらず、このまま巨人がペナントレースを制すれば、MVPは巨人の選手から選ばれる公算が高い。ところが、その巨人に傑出した成績を残した選手がいないのだ。

 過去のMVP選出例を見ると、野手なら打率3割、本塁打30本、投手なら15勝が最低ラインで、これを下回っての受賞はほとんどない。

 たとえば、2011年に受賞した中日の浅尾拓也は7勝2敗10Sだったが、リーグ最多の79試合に登板し、45ホールドと文句のつけようのない結果を残した。また、1994年に14勝11敗、防御率2.52で受賞した巨人の桑田真澄は、投球回は200イニングを超え、完投10、奪三振185(リーグトップ)と堂々たる成績を挙げた。

 さらに遡(さかのぼ)れば、打率3割に届かずに受賞した選手がふたりいる。それが、1982年の中尾孝義(当時・中日)と、1987年の山倉和博(当時・巨人)だが、彼らはともに捕手で守りでの貢献を加味されてのものだ。

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