セ・リーグ大本命の巨人はなぜ独走できなかったのか? (3ページ目)
それにしても開幕前、阿部が一塁を守り、新人が先発マスクを被るといった場面を予想した人はいただろうか。
「阿部が捕手として試合に出ると、当然、一塁には打力がある選手、今年でいえばホセ・ロペスやレスリー・アンダーソンといった外国人が入ることになります。これは相手にとってはかなりの脅威になります。その破壊力を犠牲にしてまで阿部を一塁にした背景には、数年先のオーダーを予想して、小林を育てたいという狙いもあったと思います」(飯田氏)
どこまでが将来を見据えた戦いで、どこまでが苦肉の策なのか、はっきりと分けるのは難しい。しかし、そのふたつの要素をミックスさせながら、なおかつ結果を残しているところに今年の原采配の特徴があるのではないか。そして飯田氏は、そうした采配の成功例として橋本の起用を挙げた。
「後半戦は橋本を2番に据えることが多いですが、彼は小柄な左打者だけど、きっちり右へ引っ張る打撃ができる。これは進塁打が求められることの多い2番にはもってこいの打者です。足もあるし、外野の守りも素晴らしい。橋本が来季以降も2番に定着することができれば、巨人の未来は明るいと思います」
プロ野球において難しいのは「勝ち続けること」だと言われる。もし原監督が、勝ちながら若手を育て、静かな世代交代を目論(もくろ)んでいるとしたら、その行く末は注目に値する。
今年の原巨人は“独走できなかった”のではなく、あえて“独走しなかった”のかもしれない。
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