田口壮氏「恋愛一切なし。『キャプテン』こそ、野球漫画だ」 (2ページ目)
「『キャプテン』は大人になってから読むと、また泣けますね。これがおもしろいのは現実に即してて、主役のいる墨谷二中がよく負けるでしょ。負けて、めちゃくちゃ猛練習する。これがいいんです。今見ると大丈夫かいな、という練習してますけど(笑)。
また、主人公が"キャプテン"であって、どんどん、その主人公が世代交代して変わっていく。そして誰も一切恋をしない(笑)。他にこういう漫画ないですよ。真面目な谷口がいて、熱い丸井、クールなイガラシがいて、ちょっと変わった近藤が入ってくる......それぞれ性格に特徴があって、世代の色が出てる。でも、大事なところ、苦しいところでは谷口キャプテンを思い出す。主役は変わっていくけど、実はつながっているんですよね。僕も中・高・大学とキャプテンでしたから、いろいろ共感する部分がありましたよ。丸井や近藤みたいなやつ、おったなあって(笑)。自分は谷口くんに近いかなあ。真面目で一直線で......。周りから見たら、(すぐカッとなる)丸井って言われるかもなあ」
コミック全26巻(※7)に及ぶ作品だが、一番の名場面を挙げてもらうと。
「一番は谷口の陰での猛練習。もう、キャプテンの魅力は、ここに凝縮されているでしょう。(『キャプテン』が好きで有名な)イチローも、そこが好きだと言ってましたから。野球に限らず、陰で努力することがいかに大切か、ということを学びました。僕も中学生から、現役を引退するまで、毎日の素振りを欠かしませんでした。熱があろうが毎日行なってました。ただ、僕はスポ根ではないので、1回振って、気分が乗らないなという時には、それでやめるんですけど。続けることが大事だと思ってましたから。
そう、(練習に付き合う)大工の父ちゃんもやさしいんですよね、今、なかなかああいうこと、ないでしょう? 今の子供にも読んでもらいたいなあ」
もう1つ夢中になった作品は『ドカベン』。これはまた、違った意味で魅力的な作品だと言う。
「最初、なかなか野球が始まらない。柔道漫画なのかと(笑)。『ドカベン』はある意味リアル。ありえそうだけど、マネできそうだけど......というものがいっぱいあるんです。『巨人の星』『侍ジャイアンツ』(※8)になると。絶対無理じゃないですか。養成ギブスはないし、あんなに飛び上がれないし、回れない(笑)。でも、殿馬の秘打・G線上のアリア(※9)はできるでしょう。これ明日、やってみようというものがありました。
加えて、何といっても甲子園という舞台。中高生の憧れの場所でしょう。これは惹きつけられます。そして、キャプテンの墨谷二中と逆で、明訓高校は負けない。そこに夢があるんですよね」
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