ライバルたちが語る「大谷翔平の160キロ」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そしてパ・リーグを代表するヒットメーカーの内川聖一(ソフトバンク)選手にも話を聞かせてもらった。

「大谷投手との対戦はロマンを感じています。昨年の初対戦(6月26日)の時だったかな。僕は3番を打っていたのですが、初球に150キロの真っすぐが来たんです。ちょっと本気になって投げてきてくれたのかなと、ちょっと嬉しくなったことを覚えています。今年、打席に立って印象に残ったことは、体がひと回り大きくなっていたということです。がっしりして、凄みが増して、存在感も強烈でした。去年はスラリとしたイメージでしたから。160キロが出たのは交流戦からですよね。テレビの映像でしか見ていないのですが、きっとすごいんだろうな」

―― 見る側としては、「160」という数字に夢を見ます。

「もちろん、速さやボールの質は人ぞれぞれ違いますが、150キロを超えちゃえばどれも一緒という感じですね。単純に速いだけなんです。打者として困るのは、真っすぐが速くて、どの変化球でもストライクが取れるピッチャーです。ボールが速いほど、ピッチャーからバッターへボールが到達する時間は早くなります。その速い真っすぐに対応するためいつもよりも判断を早くしなければならない。そうなると変化球への対応が難しくなってしまう」

―― 今の大谷投手を、たとえばグッド、ベスト、スペシャルにランク分けすれば、どれに当てはまりますか?

「スペシャルですよ。普通、高卒2年目でローテーションを任されることだけでもスペシャルなんですから。プラスして、打者としてもクリーンアップを打っている。僕らからすればうらやましい話ですよ。打っている時は『こんなに簡単に打っちゃうんだ』と思うし、投げている時は『こんなすごいボールを投げられるんだ』と。そういうのを目の当たりにしてしまうと、僕らとは体の仕組みが違うんだろうなと考えてしまいますよね(笑)。僕は160キロを投げられないし、あんなに速く走れない。ちょっと、持っているものが凄すぎます。これから普通に経験を重ね、成長していったときにどのくらいの選手になるのか、想像がつかないですね。二刀流を続けることに関しても、僕らにはわからない苦労や難しさがあると思うし。たとえば、打者として練習する時に右手にマメを作れないとか……。本当に難しいことに挑戦しているのだと思いますね」

 大谷の二刀流について、先日、解説者の吉井理人氏は「ピッチングのパフォーマンスが上がってきている状態で、打者もこなすとなると、相当な疲労が残ると思う」と言っていた。

 ヤクルトの杉村繁コーチは、「大谷はピッチャーに専念したほうがいい」と感じたという。

「この前、彼と対戦したけど、持っているボールの質が違うよね。真っすぐだけでなく、カーブもスライダーもいい。それにフォークもよく落ちる。この前対戦した時は真っすぐが少しシュート回転していたけど、もっと質が上がってくればメジャーでも十分に通用するでしょう。それで、真っすぐの質を高めるためには練習しかないと思う。だから、バッティング練習に時間を費やすのはマイナスではないか、と。ピッチャーと野手では、練習に異なる部分がたくさんあるのでね。たとえば、先発で投げて、中5日だったらその間に走ったりして、投手としての練習をいろいろできる。それを1日休んでバッターの練習をやるとなると。ちょっと想像がつかないですね」

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