2014.05.09

田中将大の連勝記録は「WBCの弱気」から始まった

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

エースの響き~ブルペン捕手・中谷仁が見た「超一流の流儀」
田中将大(2)

 みなさん、こんにちは。中谷仁です。私は1998年に捕手として阪神に入団し、その後、楽天、巨人でもプレイ。2012年まで現役を続け、昨年は巨人のブルペン捕手としてチームのリーグ優勝を見届けました。この16年の間、実に多くの投手の球を受けてきました。そこで、実際に受けた経験をもとに、超一流と呼ばれるエースたちの素顔に迫りたいと思います。前回に続き、今回もヤンキースの田中将大についてお話させていただきます。
(前回の記事はこちら)
2013年WBCでは本来の力を発揮できなかった田中将大。

 マー君とは、彼が入団1年目の時からチームメイトとして一緒にプレイしてきたこともあり、数多くの思い出があります。その中でも、いちばん心に残っているマー君との思い出は昨年のWBCです。

 私は侍ジャパンのブルペン捕手として、日本ラウンド、米国ラウンドと帯同しました。「なんで中谷がWBCに行ったんだ?」と思う方もいると思います。私も後から知ったのですが、当時、私が所属していた巨人の原辰徳監督がジャパンの山本浩二監督に推薦してくださったようで、こんな貴重な体験をさせていただいたことを心から感謝しております。

 そのWBCで、ジャパンのエースとして期待されたマー君でしたが、ものすごく調子が悪かった。オーストラリアとの強化試合に先発して3回2失点。第1ラウンドのブラジル戦も調子が上がらず2回1失点となり、以降、先発は任せられないと首脳陣に判断されてしまい、リリーフ待機となりました。

 ある休日練習のことです。マー君が「(中谷)仁さん、どうして僕の真っすぐは打たれるんですかね?」と聞いてきたんです。そして私は次のように答えました。

「バッターがお前の体格、フォームを見たら、150キロオーバーのストレートが来ると思って、打席で準備している。相手打者も速い球だけなら、見慣れているだろうし、想定の範囲内やと思う。いい意味でのギャップがあれば、ストレートでファウル、空振りが取れるんとちゃうかな。キャップというのは、例えば、今と同じ腕の振りで130キロしか出なかったら、タイミングは合わない。お前は同じ腕の振りで変化球を投げられる能力がある。だから、タイミングをずらす意味でもカーブやチェンジアップなどの遅い球を投げると有効だと思うよ」