20歳の新星。日本ハム・上沢直之が描く奇跡の成長曲線 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports

 長身と長いリーチ、体を使いこなせるボディーバランスの良さ。入学した頃から、フィジカルの素質は将来のプロを予感させた。しかし、本人の"思いの強さ"がなかなかついていかなかった。

「肝心な試合になると、あちこち痛がるような弱さがありました。彼が2年生の夏ですね。千葉県大会、東海大望洋との準決勝の日も腰が痛いと言って......上沢はエースナンバーをつけていたんですけど、先発を代わったんです」

 先制されて中押しされて、リリーフで上沢がマウンドに上がった時には、試合の決着はついていた。

「酷な言い方かもしれませんけど、上級生をずいぶん泣かせてきた子です。でも、その夏の不甲斐なさで目が覚めたのかな。新チームになって、目の色が変わったんです。練習でも、どうするかなと思って見ていると、自分から外野に行って走ったり、遠投をやったり、野球への取り組みがガラッと変わったんです。そういえば、顔つきも。頼りなかったのが、目つきがしっかりしてきたんです」

 16日の試合、7回に先頭打者の糸井嘉男に初安打を許すと、その後2本の本塁打を続けられて3点を奪われると、この回でマウンドを降りた。

「チームが勝てればいいです」

 上沢は淡々と胸中を明かした。

「自分が気持ちいいピッチングより、チームが勝つピッチング。これも、持丸監督がことあるごとに彼に言い聞かせていたことのひとつです。ここまで投げられるようになったのは、日本ハムさんの指導のおかげなんですけど、もう一方で、高校で教わったことが基盤になっているようにも見えるのが嬉しいですね」(森岡部長)

 一軍で投げるまでに5年はかかるだろうと、持丸監督とも語り合っていたという。

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