A・ジョーンズ流「大物メジャーリーガーが日本で成功する方法」 (3ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 当然、楽天の優勝はジョーンズにとっても、チームにとっても最高の一瞬だったに違いないが、「最高のひと時は、あの西武戦の決勝二塁打だったか?」と聞くと、ジョーンは意外な言葉を口にした。

「実は、いちばんの思い出は、1年間楽しく野球ができたことなんです」と打ち明けたのだった。

「ここ5年間、メジャーではあまり楽しい時間を過ごせませんでした。主に、相手が左投手の時に出るぐらいで、私はそれほど重要な役割を担っていませんでした。でも楽天では、『今日も試合に出られるぞ』と思いながら、毎日球場に来ることができました」

 野球を心から楽しむジョーンズの姿は、すぐに他のチームメイトにも影響を与えた。ヤクルトのウラディミール・バレンティンは2011年から楽天ベンチを見てきたが、ジョーンズが加わった2013年から、楽天が明らかに変化していることに気づいていた。

「ジョーンズが加入したことにより、ムードメーカーとしての役割を担い、星野監督と若い選手の壁をなくした」と言う。そしてこう加えた。

「いいプレイの後、監督の尻を叩いたり、遠慮なくハイタッチをしたりする姿を見ることができた」と、バレンティンはこれまでとは違う楽天ベンチの雰囲気を感じていた。

「彼が加入する前はそんな雰囲気はなかった。若い選手が監督の尻を叩くことなんてもちろんできませんでした。しかし、そこで違う文化を持つ国から大ベテランがやってきて、監督とこのような関係を築き上げた。それによって若い日本人選手たちが、リラックスし、いい雰囲気を作り上げることができたのではないでしょうか」

 ジョーンズは新しい環境に適応しただけでなく、その新天地の空気を入れかえることでチームを優勝に導いたのだった。

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