投手・大谷翔平が求めるべきものは「安定感」か「躍動感」か? (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田中正史●写真 photo by Tanaka Masashi

 どこかを痛めると、大谷の場合、どうしても「二刀流だからだ」「両方やって疲れが溜まっていたからだ」と言われてしまう。しかし、そうではないと思う。ピッチャーとしての大谷は、まだ体に負荷を掛けなければいい動きが望めない次元にいるに過ぎない。大谷はピッチャーとしてはまだ未完の大器であり、未完だからこそフォームがブレるのだ。

 だとするならば、あまりそのブレを気にすることなく、むしろ振りかぶって躍動感たっぷりに投げていく中で動きを制御しようとした方が、大谷には合っているような気もする。大器である片鱗は、61球の中に何度も窺えた。最速154キロ、当たり前のように150キロを越えるストレートを投げ込み、140キロ近い高速フォークを操って、最後はマウンドの上で初めて吠えた。

 ピッチャーとしての大谷には、”静から動”ではなく、”動から動”のダイナミックなピッチングを目指してほしいと思う。なぜなら“バッター大谷”のような動物的な”ピッチャー大谷“のほうが、見ていて圧倒的におもしろいからだ。振りかぶって、躍動感たっぷりに投げる、野性味あふれたピッチャー。第二幕が切って落とされたこの日、アクシデントがあってもなお、大谷はその可能性を十分に感じさせるだけのフェロモンを放っていた──。

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