大瀬良大地、カープとの相思相愛を実らせた勝負パンツ (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 大学ではアマチュア球界を代表する投手としての階段を順調に上った。特に、大学2年時に日米大学野球で日本代表入りしたことが成長の大きなきっかけを作った。それまでの大瀬良は「困ったらストレート」という典型的な速球派の投手。しかし、日本代表合宿で出会った東海大の菅野智之(現・巨人)に、「より高いレベルで野球をやるためには緩急を覚えないと通用しない」と言われ、変化球に磨きをかけた。現在の持ち球は110キロ台のスローカーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリットとかなり豊富。カットボールも「以前はただの緩い真っ直ぐでした(笑)」というが、今では国際舞台でも勝負球となる球種となった。

 福岡六大学野球リーグでは通算38勝8敗、防御率1.07をマーク。2年春からは3季連続でリーグMVPに輝いた。全国大会の舞台も常連で、大学3年の全日本大学野球選手権では、今季ヤクルトでリーグ最多の16勝をマークした「ライアン」こと小川泰弘(当時、創価大)と投げ合い、完封勝ちを収めている。

「高校で甲子園に出場したことでプロを意識するようになり、大学では4年経ったらドラフト1位で指名される選手になりたいと思ってやってきました」

 2013年10月24日、ドラフト会議で夢は叶った。広島、阪神、ヤクルトの3球団が1位指名。くじ引きの瞬間、テレビ画面を見つめる大瀬良はひとつの予感を感じていた。

「広島のくじを引いたスカウトの田村(恵)さんは、僕がまだ無名だったころからずっと見てくださった方なので、もしかしたら(田村さんが)引いてくれるのではという感じがしていたんです」

 縁はさらにあった。ドラフト前の10月中旬に広島に旅行に出かけ、マツダスタジアムでのパブリックビューイングで広島と阪神のCSを観戦。熱狂的な応援を早くも肌で感じていた。

 また、ドラフト当日は赤のパンツで臨んでいた。「(九州共立大の)仲里監督がいつも『勝負事は赤で臨め』と言っていたから」と、特にカープのチームカラーを意識したわけではなかったらしいが、ともかく運命に導かれるように来年からは広島カープの一員として、夢だったプロ野球選手として新しい人生がスタートする。

「1年目から活躍するのが目標です。カープの投手陣は層が厚く、12球団一の実力を持っています。自分も早く、その一員として頑張りたい」

 近年のセ・リーグは大卒ルーキーが好結果を残しており、2011年澤村拓一(巨人、中央大学出身)、2012年野村(広島、明治大学出身)が新人王を獲得。今季も最多勝の“ライアン”小川が最有力だ。来季は大瀬良が……というのは気の早い話だが、間違いなくルーキーイヤーからプロ野球界を沸かせる投手となるはずだ。

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