「ポストシーズンの悪夢」を振り払った楽天3人の野球人生 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そして田中が最後の打者、矢野謙次を三振に仕留めると、雨空に真っ白なジェット風船が舞い上がった。マウンドになだれ込む楽天ナイン。星野監督は高々と9回、宙に待った。

「ジャイアンツは私に、喜びや悔しさを教えてくれた。そのジャイアンツに勝てた。選手たちを本当に誇りに思います」(星野監督)

「ワールドシリーズでは勝てませんでしたが、こうして日本でチャンピオンになることができた。セレブレーションというのは、ワールドシリーズだろうが日本シリーズだろうが、その素晴らしさは比較できるものではありません。仙台で来年もこの喜びを味わいたい」(ジョーンズ)

「正直、まだ日本一の実感が沸かないんですが、とりあえず今はホッとしたという気持ちが一番です」(松井)

 嬉し涙が止まらない星野監督。ベンチでは何人もの選手やスタッフが泣いていた。松井は「嶋!」と叫んで抱きつき、ジョーンズは星野監督の肩に手をやり話し続け、それを星野監督は何度も何度も頷(うなず)きながら聞いていた。

 もちろん3人が同じチームに集まったのは、ただの偶然にすぎない。しかし、3人の喜びに満ちた表情を見ると、「こうなることは必然だった」と思わずにはいられないのだった。

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