無敗のエース・田中将大はなぜ打たれたのか (2ページ目)

  • 中島大輔●構成 text y Nakajima Daisuke
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そして昨日の試合に関しては、ツーシームの割合が多かった。完投勝利を収めた2戦目との一番の違いはそこでした。フォーシームをしっかり投げ込んでから、ツーシームを使った方が良かったのかもしれません。というのも、ツーシームを多投すると体の開きが早くなり、フォークやスプリットが高めに浮くことがあるんです。私も現役時代はシュートを得意としていたので、いつもそこには気をつけていました。普段の田中はそこまでツーシームを投げるピッチャーではないので、もしかしたら知らず知らずのうちに体の開きが出てきたのかもしれないですね。

 田中の調子が決して良くなかったとはいえ、巨人打線の攻撃も見事でした。5回表、ロペスが同点本塁打を打った後、続く寺内崇幸もスプリットをライト前に打ちました。ロペスは明らかにスプリットに反応して打ったのですが、寺内は狙っていました。それで楽天バッテリーは「狙われている」と警戒したのでしょうね。その後、代打の亀井善行、高橋由伸には真っすぐを続けました。

 逆転のタイムリーを放った高橋の打ち方を見ていたら、スプリットを意識しながら、真っすぐに反応したという打ち方でした。それが良かったと思います。5戦目までの高橋は打つポイントを前にして、引っ張りにきていました。5回の打席の時も、これまでのようにポイントを前にしていたら、ファウルになっていたかもしれません。スプリットを意識することで、いいタメができました。

 また、巨人先発の菅野智之もよく立ち直ったと思います。序盤は慎重になりすぎて、コースを狙いすぎていました。1、2回はボール球が多かったですよね。2回に点を取られた後は、いい意味で開き直れたのか、ストライクとボールの割合がそれまでとは変わり、リズムも出てきました。楽天打線が立ち上がりの菅野からもっと得点していれば、展開は変わっていたと思います。とはいえ、それをさせなかった菅野を褒めるしかないですね。

 そして泣いても笑っても最後の一戦。予告先発は楽天が美馬学、巨人が杉内俊哉。美馬はシュート、スライダーが中心のピッチャーですので、巨人打線はポイントを前にすると引っ掛けてしまい、楽天バッテリーの術中にはまってしまいます。一方の杉内は、特に左打者に対してはスライダーで攻めてきます。楽天はいい左打者が多く、彼らの出来がひとつポイントになると思います。第3戦で杉内を攻略した時のように、ポイントを体の近くに置いて打つことができるかでしょうね。

 いずれにせよ、第7戦は総力戦になります。お互い、惜しげもなくピッチャーを使ってくるはずです。そういった意味でも、"継投"のタイミングが重要なポイントになります。いい試合を期待したいですね。

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