セ・リーグCSファイナル。解説者7人が語る「巨人の死角」 (2ページ目)

  • 阿部珠樹●構成 text by Abe Tamaki
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

北別府学(元広島、現プロ野球評論家)

 シーズン終盤の戦いを見ていると、先発投手陣に不安はありますが、それでも内海哲也、杉内俊哉などは経験があり、大舞台になれば力を発揮するでしょう。カープの先発陣に比べると、少し状態に不安はあるがそこはキャリアがカバーするはず。リリーフの充実は言うまでもない。不安材料があるとすれば、むしろ打線だと思います。
 なかでも坂本勇人と長野久義の調子が心配です。このふたりが調子に乗るとジャイアンツ全体が活気づく。坂本は8月以降、本来の打撃がすっかり影を潜めている。コンディションに問題があるのか、技術的なスランプなのかははっきりしないが、シーズン終盤の不調からどれだけ回復しているかが問題だ。
 長野は終盤に調子を上げてきた。彼が1番で出塁して、阿部慎之助、村田修一を迎えた時は相手投手への重圧は半端ではない。逆にいえば、長野を抑えれば、阿部、村田もさほど恐れる必要はない。舞台は東京ドームだが、ソロ本塁打ならしかたないと開き直って向っていける。だから相手投手からしたら、坂本には眠っていてもらい、長野には調子付かせないように注意すれば活路は見出せる。

高代延博(第2回、3回WBC 日本代表守備・走塁コーチ)

 先発投手は決して万全とはいえない。特に気になるのが菅野智之だ。前半戦では鋭く曲がっていた得意のスライダーが、シーズン終盤ではドロンとした鈍い曲がり方に変化していた。相手打者の慣れも見逃せない。おそらく2番手で先発してくるだろうが、第1戦を落として迎えたとき、重圧とコンディションの両面で心配な材料はある。
 攻撃面では1、2番の出塁が心配だ。長野久義は終盤に調子を上げていたし、WBCで見た限りでも甘い球には強い。ただ、厳しく内角を攻められると、少し苦労するところがある。広島投手陣が内角攻めを徹底させれば、調子が上がらないままで最終戦ということもある。
 また、2番は守りや足を考えると松本哲也が入るケースが多くなるだろう。しかし、彼は意外にバントがうまくない。先制有利の短期決戦でバントをしっかり決めるのは大事な要素。ミスが出ると勢いが一気にそがれることもある。

山崎武司(今季限りで中日を引退)

 ペナントレース終盤の戦いぶりを見ると、12.5ゲーム差での圧勝というのはちょっと信じられない。それぐらい不安材料はあります。投手陣は先発を引っ張った菅野智之、リリーフの柱である山口鉄也のふたりにへばりが見えた。菅野はヒジや肩が下がり、スライダーの曲がりが悪いので、無理に曲げようとしている感じだった。下半身の疲れで十分に体全体が使えていない。
 チームリーダーである阿部慎之助の状態も気になる。普段どおりなら問題ないが、9月、10月のように無理して試合に出ているような感じだと打つほうだけでなく守りにも影響が出る。今年は盗塁阻止率もよくない。
 CSで勝ち上がってきたチームは、ローテーションの関係で2戦目以降にエースが登板するのがほとんど。だから、ジャイアンツとしては一番信頼している内海哲也で何としても初戦を取りたい。逆に初戦を落とすとタイになって、さらに次の戦いでエースをぶつけられる可能性が高い。そうなるとかなり厳しい戦いを強いられるだろう。

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