球界クライシス。セ・リーグの投手のレベルが落ちている!?

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

 ヤクルトのバレンティンが49年ぶりにシーズン最多本塁打記録を更新し、大きな盛り上がりを見せたセ・リーグ。その一方で、パ・リーグのある球団スコアラーは次のように語った。

「確かに、今シーズンのバレンティンのバッティングは素晴らしい。技術的にも、精神的にも、さすが記録を塗り替えただけのものはあります。しかし......それにしてもちょっと打たれすぎですね。バレンティンに対しての基本的な攻めは、インコースの厳しいところを突いて、外の変化球で勝負。セ・リーグの投手を見ていると、インコースの厳しいところに攻めきれていない。だから思い切り踏み込まれ、ホームランを打たれるんです」

巨人の右のエースとして期待されていた澤村拓一だったが、今季はここまで4勝と結果を残せずにいる巨人の右のエースとして期待されていた澤村拓一だったが、今季はここまで4勝と結果を残せずにいる

 そしてこう続けた。

「ホームランもそうですが、村田修一(巨人)が8月にセ・リーグ記録となる月間46安打を打ちましたよね。いくら村田の調子が良かったとはいえ、彼はアベレージヒッターではありません(2012年までの通算打率.265)。他に攻める手立てはなかったのか。どのコースに、どの球種を投げるべきか、ちゃんと理解しているピッチャーが少ないんじゃないですかね。ただ、キャッチャーのサイン通りに投げているだけのように思えます」

 このスコアラーに限らず、「セ・リーグの投手の質」を問う声は、あちこちから聞こえている。それを象徴するかのように、現在、セ・リーグのエース・前田健太(広島)と最多勝を争っているのが、小川泰弘(ヤクルト)であり、菅野智之(巨人)らのルーキーたちである。本来なら前田としのぎを削っていかなくてはいけないはずの中堅やベテランの活躍が見られない。この現状を評論家たちはどう見ているのか。かつて監督経験のある山田久志氏はこう指摘する。

「特にセ・リーグは、コントロールで勝負できるピッチャーが極端に減った印象です。厳しいところを突こうとするけど、コントロールできないから四球になる。今度は四球を出したくないあまりストライクゾーンで勝負しようとするけど、ピンポイントで投げられないから打たれる。まさに悪循環。打者とまともに勝負できるピッチャーが少なくなりました」

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