連続写真で見る「松井裕樹、奪三振のメカニズム」 (3ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • 山田翔貴●写真 photo by Yamada Hiroki

与田剛の解説「オーバースローを可能にする体の柔らかさと強さ」

  

 最近では珍しい超オーバースローピッチャーですね。左投げで、これだけ真上から投げ込むピッチャーというのは、ほとんどいないんじゃないでしょうか。それだけでも貴重です。本人もしっかり上から投げようとする意識があるのでしょう。②を見れば、しっかり軸足で立とうとしていることがわかります。ここで力が入ると、軸がぶれて体が傾いたりするのですが、力が抜けた非常にいい状態です。

 そこから徐々にスピードを上げていくのですが、④~⑥にかけては、しっかりパワーを溜め込んでいる感じが伝わってきます。⑥にしても、これがもう少しのけ反ってしまうと、重心が安定しなくなり、腕もスムーズに振れなくなるのですが、ギリギリのところで踏ん張っている。だからこそ、⑦のように勢いよく腕を振ることができるんです。彼の特長である腕の振りは、こうした体の使い方にあります。ヒジの位置も高いですし、理想のフォームと言えます。

 ただ、松井投手の試合は何度かテレビで見たのですが、ひとつだけ気になるところがあります。それがステップ幅です。⑦はしっかりと自分に合ったステップだと思うのですが、たまに広くなったり、狭くなったりする時があります。そうなるとリリースが安定しなくなり、ボールも暴れてしまう。早く自分に合ったステップ幅を見つけることが今後の課題になるような気がします。

 しかし、これだけ真上から投げるのは本当に難しいことです。私も、高校時代に真上から投げようとしたのですが、できませんでした。真上から投げようとすれば、⑥のように体を反らさないと投げられないわけで、これは体の柔らかさと強さがないとできないんです。ちょっとでもブレてしまうと、ケガにもつながりますし、何よりいい球がいかない。この投げ方ができるだけでもすごいことですし、あれだけ三振が奪えるのも納得できます。このフォームは彼の個性ですので、プロに入ったとしても変えてほしくないですよね。

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