「投手の繊細さ」と「打者の大胆さ」。
日本ハム・大谷翔平が持つふたつの刀 (4ページ目)
それは、ピッチャーとしての大谷とバッターとしての大谷というだけでなく、野球人としての繊細さと大胆さという二面性を持ち併せた大谷の魅力を感じ取っていたからに他ならない。そして、その二面性はやがて、繊細なピッチャーとしての大胆さ、大胆なバッターとしての繊細さにつながっていく可能性がある。バッターとして打席に立ち、いいピッチャーの球筋を見られるとか、ピッチャーとしていいバッターの仕草や雰囲気を肌で感じられるということよりも、むしろ己の中にある二面性をそれぞれに活かせることの方が、大谷翔平をでっかくしてくれるのではないだろうか。
5月23日、札幌ドーム。
映画、“Back to the future”でお馴染みの、パワー・オブ・ラブ(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)のテーマソングに乗って、大谷がマウンドへ上がる。
ピッチャーの大谷、プロ初先発。
その初球、力が入りすぎて、大谷はボールを引っ掛けてしまう。低めに外れたストレートが叩き出した球速は、それでも152㎞/h。2球目、ストライクゾーンにきっちり決めたストレートが、今度は150㎞/h。大谷が初回に投げた10球、すべてがストレートで、そのすべての球速が150㎞/hを超えた。3番の岩村明憲に対しては、2度も154㎞/hを弾き出した。キャッチャーの鶴岡慎也が言う。
「アイツの一番いいところはストレートの速さですから、そういうことを加味しました。速いピッチャーは押せるところまでまっすぐで押すのがいいので……」
つまりこの日、鶴岡も“宣戦布告”の片棒を担いだのだ。
宣戦布告──栗山監督は、野球界の四方八方から吹きつける“球界の常識”という激しい向かい風と戦いながら、大谷の二刀流を後押ししてきた。
「キャンプで見た大谷の体が思ったよりもできあがっていたことと、一軍の試合に出ることのプラスアルファを考えた。ああいう力のある選手は、二軍でやっていても野球がつまらなくなってしまうことがある。だから、アイツに相応(ふさわ)しい道筋を考えなきゃいけないと思って、やってきたんだ」
4 / 5