「投手の繊細さ」と「打者の大胆さ」。
日本ハム・大谷翔平が持つふたつの刀 (3ページ目)
それが、新たな選択肢が示された。
まずは両方、やってみるか。
それが大谷にとっていかに魅力的な選択肢だったか、想像に難くない。
もともと野球の世界では、ピッチャーとバッターはキャラがまったく異なっている。大雑把にいえば、繊細で理屈っぽく、孤高のプライドを持つのがピッチャーであり、大胆でアバウト、徒党を組むのが好きなのがバッターだ。一度のミスも許されない完璧な仕事を求められるピッチャーと、7割はミスをしても一発でかい仕事をすればヒーローになれるバッターでは、性格も異なって当然だ。まして一週間に一度が仕事の先発ピッチャーと、全試合ゲームに出るのが当たり前になっているレギュラーのバッターでは、考え方や遊び方も自然と異なってくる。
大谷にも、それは当てはまる。
ピッチャーの大谷は繊細で、バッターの大谷は大胆だ。
バッターとして、大谷は開幕戦でライオンズの岸孝之の初球を捉えてライト前ヒットを放った。札幌デビューとなったホークス戦でも、昨年の沢村賞投手、攝津正の初球を左方向へ打ち返し、ツーベースヒットを放っている。右足首の捻挫が癒えて最初の打席となったイースタンでの第1打席でも、大谷は初球を思い切って振りにいき、空振りを喫した。バッターとしての大谷は、超のつく積極性を見せている。
その反面、ピッチャーとしての大谷は繊細さが裏目に出ていた。
ランナーが出ると、走られることを気にして投げ急いでしまう。ボールが先行すると、フォアボールを出すまいとボールを置きにいこうとして腕が振れなくなる。16歳の大谷が挙げた4つの課題のほとんどは、18歳の今も変わらず目の前に横たわっている。
ファイターズの栗山英樹監督は、大谷をドラフトで指名した直後からこう言い続けてきた。
大谷翔平は二人いる、と。
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