阪神・藤浪晋太郎はプロ1年目の松坂大輔を超えることができるか? (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 小池義弘●写真 photo by koike Yoshihiro

 横浜高校で松坂を指導した小倉清一郎コーチはいう。

「松坂は、初登板の時に片岡選手を三振にとった高めに浮き上がるようなストレートと大きなスライダーという、即プロで通用する武器がふたつあった。高卒ルーキーでも150キロを超すストレートと何かひとつ決め球があれば、十分に勝てると思います。私の指導方針として、プロに行くような投手には、高校時代に徹底してフィールディングとけん制、クイックモーションを教え込ませます。できるだけバッターとの対決に専念させたいですから。松坂を送り出した時も、ピッチング以外の技術を完璧といっていいぐらいに鍛えました。まさか16勝もするとは思っていませんでしたが、普通に勝てるだろうとは思っていました。藤浪選手はあれだけの長身ですから、そういう細かい技術がどうなのか。ピッチング以外のことに頭がいっちゃうと、ピッチングまで狂ってきちゃうんです」

 藤浪も高校2年生の頃には、足もとの打球処理や、けん制の練習を何度も繰り返し行なった。大阪桐蔭で指導した西谷浩一監督は昨年のセンバツ大会優勝時に、こう話していた。

「190センチを超える選手を私も預かったことがありませんでしたから、指導法を迷った時期がありました。バント処理があまり上手ではなかったので、試合のない冬場の時期は、徹底してフィールディングやけん制球の練習をさせました」

 4勝目を目指した5月5日のヤクルト戦では、初回一死一、二塁のピンチで二塁走者をけん制で刺した場面があったが、タイミングのよさ、送球の正確さを見れば、高校時代に相当叩き込まれたことは明白だった。

 その試合では5回表に下位打線に一発を浴び、3点を先行された。それでも粘り強く7回を投げ抜き、同点のままマウンドを降りた。前半はスライダーでカウントを整え、最速152キロのストレートを勝負球に選び、疲れの見えた後半は前半にまったく投げなかったフォークを多投して、ヤクルト打線を翻弄。イニングや対戦相手によって、ギアを入れ替えているのが伝わってくる内容だった。試合後、藤浪は次のように語った。

「自分が点を取られなければ勝てた試合だった。そこが悔やまれます」

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