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【プロ野球】大混戦必至のパ・リーグ。ペナントを左右する新戦力の出来 (4ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 各チームが積極的に戦力補強する中、大きな動きがなかったのが西武とロッテ。特に西武はチームの中心選手だった中島裕之がFAでメジャーに移籍。さらに昨年本塁打王の中村剛也が昨年10月に痛めていた左膝の手術を受け、前半戦の復帰は微妙な状況。攻撃力の低下は避けられそうにない。しかし、オープン戦ではチーム本塁打数は18試合でわずか1本ながら、12球団トップのチーム打率(.295)と盗塁(24個)で77得点(12球団4位)を挙げた。渡辺久信監督は「チームはまだ完成していない」と語るが、チームの方向性は見えてきた。昨季、外国人選手では56年ぶりの40盗塁以上をマークしたヘルマンをはじめ、かつて4年連続盗塁王(2007年~2010年)に輝きながらも度重なるケガに泣いてきた片岡治大(今季から登録名変更)の復活に期待したいところだ。

 また、投手陣はWBC日本代表の涌井秀章、牧田和久に加えて、実績十分の岸孝之が中心となるが、チーム浮沈のカギを握るのが、かつての「ドラフト1位」の投手たち。なかでも、2009年1位の菊池雄星と2010年1位の大石達也だ。オープン戦で菊池は1勝3敗ながら防御率は2.57と安定した投球を見せた。結果もさることながら、大きな収穫はかつての剛速球を取り戻しつつあることだ。3月9日の中日戦ではプロ入り最速の152キロをマーク。渡辺監督は「力んだあとの四球は心の動揺からくるムラっ気」「今のままでは1年持たない」と厳しい言葉を浴びせるが、若い先発左腕が極端に不足しているチームにあって、菊池は欠かすことのできない戦力。渡辺監督の厳しい言葉は、期待の裏返しでもある。

 大石はオープン戦で8試合に登板して9イニングを無失点に抑え、3セーブを挙げた。特筆すべきは、打者33人と対戦して、被安打わずか3本という内容だ。これまで西武はクローザーに大きな課題を抱えており、一昨年は牧田、昨年は涌井が務めたが、いずれも急場しのぎの感は否めなかった。今シーズン、大石をクローザーに固定できれば数年来の課題もクリアされ、戦い方も大きく変わってくるに違いない。

 ロッテはここ2シーズン、6位、5位と低迷しているが、それでも目立った補強は行なわずに今シーズンを戦う。その中で、明るい話題といえば唐川侑己の復調である。昨シーズンは7月上旬までに8勝を挙げるも、直後に右ひじの不調を訴えシーズンを棒に振った。今春のキャンプも右手首を痛めて出遅れたが、3月24日のオープン戦最終戦(中日戦)で実戦登板を果たし、5回を被安打2、無失点、6奪三振と好投。伊東勤新監督が「(唐川は)1年間働いて、12~13勝はしてもらわないと……」と言うように、1年を通して投げることができれば、投手陣の安定度も増してくる。一昨年の日本一メンバーも多く残っており、上位を狙えるだけの戦力は整っている。

 注目ルーキーや大物外国人など、例年以上にフレッシュな顔ぶれが揃った今シーズンのパ・リーグ。言い換えれば、未知の部分も多く、彼らの成績次第で大きく順位も変わってくる可能性が高い。現時点では選手層の厚さでソフトバンク、オリックスが一歩リードしている感があるが、果たして……。いずれにしても、今年もシーズン終盤までもつれることは間違いなさそうだ。

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