【WBC】急成長中。緻密さと力強さを兼ね備えたブラジルに要注意! (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 その言葉に諦めなどはなく、勝利への自信すら込められている。

 ラーキン監督をサポートするコーチ陣には、2003年の高校野球センバツ大会で準優勝した横浜高校の4番・黒木豪がいる。成瀬善久(ロッテ)と同級生で、涌井秀章(西武)の1学年先輩だ。黒木は大学卒業後、海外ボランティアの一環としてブラジルに赴き、サンパウロのクラブチームを強化したことが買われ、ブラジル野球連盟のコーチに就任。代表チームのコーチも務めることになった。日本の野球ファンとすれば、涌井と黒木コーチが立場は違えど、福岡の舞台で対するというのも楽しみではある。いずれにしても、野球発展途上の国に、こうした日本野球の経験者が関わっていることは興味深い。

 特に、ブラジルはユニークな形で野球振興が図られている。サンパウロには「ヤクルトアカデミー」という、ブラジル野球・ソフトボール連盟とヤクルトの現地関連法人が共同運営する野球学校があり、適性のある選手はここに集められ指導を受けている。現在ヤクルトに在籍している松元ユウイチら、日系選手の多くはここで基礎を学び、日本やアメリカに渡って野球を続けている。ちなみに、1次ラウンド初戦の日本戦で先発濃厚な右腕、ラファエル・フェルナンデス(ヤクルト)もここで育ったひとりだ。

 また同施設を使用して、MLBの支援で「エリートキャンプ」を実施。MLBからコーチ経験者がやって来て、選手たちに指導を行なっている。今年も1月下旬から2月上旬にかけて開催された。WBC出場選手もそこに加わり調整して、松元ら日本のプロ野球のキャンプに参加していた選手たちと、日本で合流した。もともとアスリートとしての潜在能力は定評があるブラジルのスポーツ選手。そこに日本の指導者とMLBの指導者が、どのような形で育成していくのか。"衝突"してしまうとまずいが、うまく融合すれば、これまでにない魅力的な選手が登場する可能性は高い。

 例えば、今回WBCの参加選手の中で最年少エントリーとなる16歳の投手、ダニエル・ミサキも魅力的な存在だ。2月28日に行なわれたソフトバンクとの練習試合では8回から登板し、いきなりフォークを投げ込んでくる度胸の良さを見せた。まだストレートは140キロに満たないが、投球フォームのバランスといい、腕のしなりといい、見るからに大きく育つ逸材だ。現在はマリナーズ傘下のルーキーリーグに所属しているが、WBCという大舞台でどんな投球を見せるのか注目だ。

 他にも、俊足のパウロ・オーランド(ロイヤルズ傘下/外野手)も楽しみな選手だ。元・短距離の陸上選手で、マイナー屈指の俊足として知られている。「阿部(慎之助)が素晴らしい捕手なのは知っていますが、アグレッシブに走りたい」と意気込みを語る。 選手構成は約半数が日系人というのは、もはや説明する必要もないだろうが、キャプテンの松元ユウイチをはじめ、曲尾マイケ(元ヤクルト/外野手)、仲尾次オスカル(ホンダ/投手)、吉村健二(ヤマハ/投手)ら、日本で野球を学んだ選手も多く、緻密さと力強さを兼ね備えた彼らのプレイは日本の脅威になるかもしれない。いずれにしても、彼らのプレイは、結果を別にして応援したい。それもまた、WBCの楽しみ方のひとつだと思う。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る