【WBC】侍ジャパン2009「勝負を分けたあの継投」

  • 木村公一●取材・文 text by Kimura Koichi
  • photo by Taguchi Yukihito

準決勝のアメリカ戦、突然抑え役を任されたダルビッシュ。準決勝のアメリカ戦、突然抑え役を任されたダルビッシュ。【プレイバックWBC2009】
山田久志、与田剛のブルペン奮戦記

国際大会では"継投"が勝敗を分けると言われている。ましてや球数制限のあるWBCではなおさらだ。今回その大役を任されたのが山田久志と与田剛のふたり。彼らはいかにしてジャパンを勝利へと導いたのだろうか?

ダルビッシュを抑えとして起用

 ジリリリーン、ジリリリーン。

 ドジャースタジアムのブルペンに備え付けられた電話の呼び出し音は、古ぼけた目覚まし時計のような音を響かせる。

 この日、何回目の音色だろう。3月22日、WBC準決勝の対アメリカ戦の8回。四球を挟み二塁打ふたつで日本が6-4の2点差に迫られたときだった。大歓声にかき消されながら、電話がまた鳴った。

 ブルペン担当の与田剛コーチが受話器を取り、ベンチの山田久志投手コーチからの指示を確かめる。

 このときブルペンでは、藤川球児とダルビッシュ有のふたりが熱のこもった投球を見せ始めていた。

 受話器を置くと、与田がゆっくりとダルビッシュに近づき声をかけた。

 するとダルビッシュは、右手の人差し指を自身の胸にあて、一瞬、戸惑いの表情を見せつつ口を開いた。

「えっ。僕がですか!?」

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