【プロ野球】吉井理人が語る、ダルビッシュがメジャーで苦しんだ理由 (3ページ目)
―― 吉井さんも5年間、メジャーでプレイされましたが、メジャー球や硬いマウンド、さらには中4日のローテーションなど、日本人投手が乗り越えていかなければいけないものはたくさんありますが、吉井さん自身、いちばん苦労したのは何でしたか。
「中4日のローテーションでしたね。最初はどんな調整法がいいのかもわからなかったですし、中4日というのはギリギリ体が回復するかどうかのところなんです。だから、中4日で投げる試合がデーゲームの時は、体が戻りきれていなかったのか、ほとんど勝った記憶がありません。コーチからも『お前にアメリカ人のような回復力があればな』ってよく言われました(笑)。もちろん慣れもあると思うのですが、筋肉量とか質も関係しているのかなと、真剣に考えました」
―― ボールやマウンドについては。
「僕はメジャーリーガーになりたかったので、まったく気にならなかったです。1年目のキャンプの時は、途中で腕がパンパンに張りましたけど、すぐに慣れました。最初は違和感もあると思いますが、こればっかりはどうしようもないことなのでね。ボールが合わない、マウンドが合わないというなら、メジャーに来なければいいんです」
―― ダルビッシュ投手も最初はメジャー球に苦労しているように思えましたが……。
「日本のボールよりも確かに滑りやすいですし、強く握ろうとするとフォームに変化が起きてしまう。ただ、シーズン終盤のダルビッシュを見たら、元に戻っていましたよ。ストレートの割合も増えたんじゃないかな。ピッチャーはストレートを投げることでフォームが固まり、安定するんです。ダルビッシュは前回のWBC(2009年)の時も、スライダーを投げ過ぎてフォームを崩したことがあった。そして今回も、ツーシームを曲げようとしすぎたことでおかしくなってしまったんだと思います。でもダルビッシュのすごいところは、すぐに元のフォームに戻せることなんです。だからこそ、いろんなことにチャレンジできるのだと思う。成長しながらも、コンスタントに勝てる理由はそういったところも関係していると思います」
―― 来年のダルビッシュ投手に期待することは?
「これまでのダルビッシュを見て思うことは、彼の目指すところはずっと上にあるということです。そこには確実に進んでいるのですが、まだまだ成長の途中だと思います。だからこそ、今年の経験をどう生かしていくのか楽しみですね」
―― 最後に、吉井さんにとって投手コーチとはどういう存在でありたいと思っていますか。
「投手コーチの話をいただいた時、何をしたらいいのかまったくわかりませんでした。そこで自分の現役時代を振り返り、コーチに何をしてもらった時が嬉しかったのか、ずっと考えたんです。そうしたら、何も浮かんでこなかった(笑)。逆に、嫌なことはノートにびっしり書けるぐらいあったんです。そこで思ったのが、選手がやることを邪魔せずに見守ることが僕の仕事なんじゃないかと。とにかく投手を気持ちよくマウンドに送り出すことが唯一の仕事だと思ったんです。またメジャー時代に、ボブ・アポダカというコーチから、『オレはお前のことは知らない。お前のピッチングをいちばん知っているのは、ヨシイなんだから、オレにいろいろ教えてくれ。そうすればしっかりと見ておくから』と言われたんです。その教えが、僕の基本になっていますね。こっちから積極的に教えることはないけど、選手が困っている時は助けてあげたい。そういう存在でありたいですね」
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