【プロ野球】斎藤佑樹「野球が嫌いになりそうな時期もあった」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

── それでも、春先からオールスター前までは、決まって試合後に「調子はいい」とおっしゃっていました。

「不思議なもので、結果とは逆にあの時期はだんだん指にボールがかかって、100パーセント、力が伝わっている感じが出てきていたんです。しかも、それをちゃんとコントロールできていた。ところが、そういう球を結果的に打たれてしまうということは、この感覚も見直さなければいけないのかなと思うようになって......」

―― それはいつ頃からですか。

「きっかけは5月の函館(1回3分の1を投げ、6安打、4四球、自己ワーストの失点9、60球 でKOされ、2敗目を喫した西武戦)だったんじゃないかと思います。あれが大きかったのかなと......まず、ストライクが入らなかった。風の強い日ではありましたけど、でも、それで自分の持っているものが本物ではなかったんだと思ってしまったんです。どんなコンディションでも、ちゃんとしたものを持っていれば それなりに試合は作れたはずなのに、自分の持っているものが曖昧だったと気づいてしまった。そこから一気に崩れてしまった気がします」

―― 函館の後、誕生日(6月6日)には勝ったものの、5月からの3カ月、11試合に先発してその1勝だけ。そのきっかけが函館だったんですか。

「そうですね。リセットできればよかったんですけど、それもできないまま、勝てない試合が積み重なっていった。そうするとあれこれ考えてしまうんです。 函館で、力を抜いてストライクを取りに行ったらガンガン打たれたイメージが残ってしまって、簡単にストライクを取りにいけなくなってしまいました。結局、慎重に入って、初球、ワンストライクが取れないと、バッターは次に絶対ストレートを狙っているだろうと考えて、変化球を選んでしまう。でも、たとえば真っすぐを狙っていたとしても、狙っているポイントって、ストライクゾーン全部じゃなくて、コースを絞って狙っているわけですよね。なのに真っすぐを狙われているからと、真っすぐを投げるだけで打たれてしまうんじゃないかと思ってしまう。真っすぐを狙われていても、アウトコース低めにきっちり投げればファウル になるという考え方が持てませんでした」

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