【プロ野球】斎藤佑樹が語った「エースという言葉は好きです」 (3ページ目)

　きわどい低めがストライクにならず、しかも低めへの変化球に手を出してもらえない。そして、ベルトよりも高いボールに対しては積極的なアプローチを仕掛けられる。もともと甘く入ったら一発のある強力打線に対し、ボール先行を嫌う斎藤のピッチングは、少しずつ甘くなってきた。せっかく追い込んだ寺内に対しては、その後、チェンジアップ、ストレートを低めに投げたものの、もう手を出してくれるはずもない。結局、２－２の平行カウントになったところへ投げたアウトコース、ベルト当たりのストレートを、逆らわずにライト前へ運ばれた。

　そして――。

　続く長野久義に投げた初球、インコースへのツーシームを、斎藤はものの見事にレフトスタンドへ運ばれる。痛恨の先制２ランである。

　試合後の斎藤はこんなコメントを残した。

「悔しいですね。失投とかではないので……ちゃんとミットの通りのところだったので、長野さんにうまく打たれました。今日は真っすぐに関しては、いいという実感があったんですけど、５回はまっすぐだけという感じになってしまって、１回や２回よりも投げるボールが少なくなってしまいました。もっと変化球で勝負できるようにならないと、三振が取れないんですよね……真っすぐで内野ゴロは取れますけど、変化球で三振が取れないんです」

　斎藤は、長野の第１打席に外寄りのストレートを右へ、第２打席では高めに浮いたスライダーをレフト前へ打たれた。そして第３打席でインコースの低めに沈むツーシームを綺麗に弾き返されてしまっては、もはや長野に対し、投げるボールは残されていなかった。

　そして、６番の高橋由伸にも第１打席では外寄りのカットボールをレフトへ、第２打席では内寄りのストレートをライトへ引っ張られた。第３打席、高めに浮いたチェンジアップをライト前に落とされ、あまりにも痛い３点目を失った。斎藤は長野と高橋のふたりに、徐々に攻め手を塞がれた感じだった。その点について、吉井理人ピッチングコーチはこんなコメントを残している。

「それはピッチャー側というより、バッター側でしょうね。タイミングが合うんでしょう。本人も実力不足と言っていたみたいですが、ホームランを打たれるまではよく頑張ってましたよ。ホームランを打たれた後は、ちょっとひるんだ感じになってしまったけど……一発を警戒しすぎて、自ら後手後手のピッチングになってしまって、投げる球がなくなっていった感じですね。いいところに投げようとし過ぎて、慎重になり過ぎたということなのかな」