【プロ野球】笑顔のバースデー勝利。斎藤佑樹が描く「最強の24歳」とは? (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 中5日とか中6日で投げるピッチャーにとって、33日目というのは、じつは“5日目”に過ぎない。勝てていないのは4試合だ。そこがプロでローテーションを担う先発ピッチャーにとっては難しい心の持ちようでもある。

 5月4日、札幌でバファローズを相手に4勝目を挙げた。
 5月12日、函館でライオンズにメッタ打ちを喰らった。
 5月19日、広島で好投したものの、野村に投げ負けた。
 5月25日、札幌でドラゴンズにノックアウトされたものの、試合は引き分け。
 5月31日、神宮で栗山監督の荒療治を受け、早々に交代を告げられた。

 そして6月6日の先発には、いくつかの意味が重なっていた。

 神宮で早々に代えられた悔しさを晴らせるのか。
 ライバル、野村との投げ合いに続けて負けるわけにはいかない。
 チームとしては、吉川光夫の危険球退場から喫した前夜の大敗の流れを断ち切りたい。
 そしてこの日は、斎藤の24歳の誕生日だ――。

 1点を勝ち越した9回は、クローザーの武田久がマウンドに上がった。それが現時点での勝ちパターンなのだから、この交代はやむを得まい。ただ斎藤が、投げる試合は完投してくれるかもしれないと思わせるレベルならば、88球、8回1失点のピッチングは、当然、9回も続投だろう。栗山英樹監督は斎藤にそのレベルを求めている。

 結局、2-1でファイターズは逃げ切った。そして、斎藤は1カ月ぶりの白星を手にした。試合後、栗山監督はこう言った。

「よかったね。今日はホントによかった。斎藤には厳しいけど、でも、こういう日に投げるのもすごいし、勝つのもすごい。こっちもムチャクチャしてる(神宮で早々に代えたこと)のは、何とかして欲しかったから。代えられて悔しかったと思うけど、絶対、今後に活かしてくれる選手だと思うから……彼ともいろいろ話したけど、苦しかったんだなぁという胸の内も聞けたし、ああいう想いがあれば先に進めるよね。9回は行かせるかどうか考えたけど、やっぱりオレに代えさせるようなピッチングをしたら、ダメ。今日みたいなピッチングが最低限だと思ってこっちも開幕を任せてるわけだし、これがギリギリの合格ライン。シーズンを終わったとき、あの勝ちが大きかったというゲームになってくれたらいいんだけどね」

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