【プロ野球】巨人快進撃のキーワードは「理想よりも現実」 (2ページ目)
もうひとつ、ジャイアンツ打線がうまく機能しはじめたのは、ふたりのベテラン選手の働きが大きいという。
「坂本(勇人)、村田(修一)、阿部(慎之助)の3人は得点源と思われているが、実は走者を返すだけでなく、自分たちもよく出塁する。塁に出た彼らをどのように還していくか。そのためには6番、7番打者が重要になってきます。原監督は最初、高橋(由伸)を試験的に1番に置いたり、谷(佳知)を2番にしたりしていたが、途中から6番、7番の重要性に気づいて、彼らを固定するようになった。高橋も谷も実績のある選手だし、役割をはっきりさせて、働き場所を与えればあれくらいはやってくれる選手です。このふたりのベテランの力は大きいですよ」
投打ともうまく機能しているジャイアンツだが、問題点はないのか。特に、気になるのは1番・長野久義、3番・坂本という配置だ。ともに、ジャイアンツの将来を左右する選手だけに、どこを打たせるかは難しいテーマだといえる。
「長野1番は適任か?」と聞くと、須藤氏は少し苦笑しながら答えてくれた。
「うーん、相手側からすれば、1番という固定観念を裏切る選手であることは確かだね。1番というのはまず、投手に多くの球を投げさせて、四球でもいいから出塁することを狙う。でも長野の場合は、ストライクゾーンに来た球はどんどん振っていく。それが彼のよさでもあるのだが、1番の適性ということでいうと、疑問がないこともない。ただ、坂本に比べると足があるので機動力が使える。そういうことも考えて1番に置いているんじゃないかな。打線というのは将来を見据えてというよりも、まず現状でなにが必要かを考えて組むもの。原監督も最近は近未来なんて言わなくなったが、そのあたりを感じているんじゃないかな」
つまり、巨人の好調を生んでいる理由のひとつに、理想を追い求めるのではなく、現状で何がベストかを判断し、そこに適材適所の人選を行なっているということが挙げられる。もちろんそれを可能にしているのが、巨人が誇る選手層の厚さであり、チームの中心選手だけでなく脇役、ベテランといった選手たちが自分の役割をしっかりこなしているからこそ。この層の厚さがある限り、大きな足踏みは考えにくい。
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