【プロ野球】充実の2年目、斎藤佑樹がブルペンでつかんだ手応え (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 初日、ブルペンに入った斎藤。

 同じ組には、同級生が揃っていた。

 現在のファイターズには、斎藤と同い年のピッチャーが4人、いる。その4人が全員、今年のキャンプは一軍スタートとなった。斎藤は、この4人と一緒にブルペンに入るよう指示されたのである。

 広陵の左腕、吉川光夫。
 北照の右腕、植村祐介。
 鹿児島工から九産大を経た右腕、榎下陽大。
 東洋大姫路、東洋大と進んだ左腕、乾真大。

 そして早稲田実、早大をいずれも日本一に導いた右腕、斎藤佑樹。

 辰年生まれの年男が5人、ブルペンで並んで投げていた。これからのファイターズに新たな息吹をもたらす、若い力である。

 しかし、このメンツならばこそ、斎藤は黙っているわけにはいかなかった。

 格の違いを見せつけなければならない。

 去年はキャンプ2日目に初めてブルペンに入り、武田勝、林昌範に挟まれてキャッチャー出身の梨田前監督にまず3球、ストレートを投げ込んだ。その後は、変化球を交えながら、丁寧にコーナーへ投げ分ける。プロの世界をそっと覗き込もうとする斎藤と、斎藤を品定めしようとする周囲の目が交錯し、重苦しい空気が支配する、そんな雰囲気の初ブルペンだった。

 今年は、そうではなかった。

 斎藤の立ち居振る舞い、投げるボール、すべてが一変していた。

 5人の最後にブルペンに入る。

 ポンと、第一球を投げた。

 リズムよく、ポンポンとボールを投げる。

 キャッチャーが座ると、ストレートを続けた。力むことのない、穏やかなフォームなのに、腕の振りからはかなりの力感が伝わってくる。ボールをリリースする瞬間、すべての力を指先に集めようとしているからだ。ボールが空気を切り裂く音は、ひときわ高い。

 圧巻だった。

 ストレートばかり、31球。

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