イチローの圧倒的才能を間近で見た田口壮は「自分が首位打者を目指す意味はあるのか」とプレースタイルを変えた (2ページ目)
── ボール球でもヒットにしていた印象がありました。
田口 そうですね。とにかくミート力がずば抜けていました。それに足も速かったですし、それを生かすバッティングもできた。ヒットゾーンが広く、「そのボールも届くの?」という感じでしたね。
── 同期入団ということで、比較されたりすることはありましたか。
田口 比較されることはなかったですが、彼のことを聞かれる機会はどんどん増えましたね。僕自身のことよりも、彼のことを聞かれるという(笑)。
【自分は違う道で生きていかないと】
── 田口さんご自身、子どものころからずっと野球をやってこられて、すごい選手をたくさん見てきたと思います。
田口 正直、「この人には勝てないな」と思う選手はたくさんいましたが、なかでもイチローは圧倒的でしたね。こっちは3割を目指すのが精一杯なのに、毎年のように3割7分、3割8分を打つ。「こんな選手がいるなかで首位打者を目指す意味があるのか」と、打率という目標そのものが意味を持たなくなるくらいでした。それよりも出塁するとか、ランナーを還すとか、別の価値を見いだしていかないと、このチームで生きていけないなと思いました。
── 仮にイチローさんが違うチームにいたら?
田口 おそらく、引退するまで3割を目指していたと思います。だけど、彼が同じチームにいたことで、「自分は違う道で生きていかないと」と考えるようになりました。
── 守備でも、田口さん、イチローさん、本西厚博さんの外野陣は鉄壁でした。
田口 自分で言うのもなんですけど、あの外野陣はすごかったと思います。守備の連携も、質も高かったです。本西さんがうまくバランスを取ってくれて、僕たちをフォローしてくれました。
── 当時、イチローさんは「(ランナーを)回らせて刺殺する」スタイルだったと聞きました。
田口 そうですね。彼はそういうプレーができる選手でした。僕はどちらかというとチャージして、ランナーを止めるほう。というのも、僕はもともとイップスがあったので、投げるよりも"ランナーを止める"ことに意識を置いていました。
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