「人のためでもあるけど自分のためでもある」 大塚晶文が語るチャリティ活動を行なう意義 (3ページ目)
ここで少し堅い話になるが触れておきたい。ヨーロッパには「ノブレス・オブリージュ」という概念がある。
もともとは高い社会的地位、権力、財力を持つ貴族が果たさなければならない社会的責任を意味する。近年ではその対象が貴族に限らず、資産家にも広がっているという。(慈善事業が資産家の節税対策として利用されるという議論については、ここでは割愛する)
また世界三大宗教のなかで、「慈善」の概念はキリスト教だけのものだろうか。もちろん、そんなことはない。イスラム教には「ザカート」や「サダカ」、仏教には「喜捨」という慈善の考え方がある。日本も仏教圏の一部ではあるが、この言葉を聞いてピンとくる日本人は多くないかもしれない。
しかし、上座部仏教が主流の東南アジアやスリランカの人々にとっては、慈善は生活の一部として根付いている。我々日本人にしっくりくる言葉を探すなら、「利他」や「共感」といった表現が近いかもしれない。
問題を抱える他者に共感し、個人ができる範囲で手を差し伸べる。難しい理屈など必要ない。いたってシンプルなことだ。宗教の違いにかかわらず、人とは本来そういうものだろう。
【中日・井上一樹監督の行動力】
福は慈善活動を始めた際、一部のドラゴンズOBから心ない言葉を受けたと言うが、OBたちも捨てたものではない。NPBにおいてMLBの「ロベルト・クレメンテ賞」にあたるものは、報知新聞が主催する「ゴールデンスピリット賞」だ。過去にはドラゴンズと縁のある5名が受賞している。
片岡篤史、中村紀洋、小笠原道大、山﨑武司......彼らとは面識があり、全員が年上だ。心苦しいが敬称は略させてもらう。この4人は、いずれも他球団在籍時に受賞している。しかしひとりだけ、ドラゴンズ生え抜きのOBがこの賞を受賞している。現中日監督の井上一樹である。
井上監督は、昨年までのファーム監督時代から、どうしたら選手やファンが喜ぶかを常に考えていた。「こうすれば相手が喜ぶのではないか」とアンテナを張り、実際に行動に移していた。球団内部のことなので記すことはできないが、具体的なエピソードはいくつも思い浮かぶ。その姿勢があったからこそ、この賞の受賞につながったのだと、私は部下として強く感じている。
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