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【MLB】「菅野智之は放出される」トレード期限まで1カ月 オリオールズ番記者が語る「チーム建て直し」のシナリオ (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【菅野を取り巻くオリオールズの事情】

チーム事情も踏まえて菅野のトレードの可能性について語ってくれたダブロフ記者 photo by Sugiura Daisukeチーム事情も踏まえて菅野のトレードの可能性について語ってくれたダブロフ記者 photo by Sugiura Daisuke メジャーでは、シーズン中に強豪チームに引き抜かれる選手を "A Hired Gun(雇われガンマン)"と称すことがある。後半戦の戦いを期間限定で助ける存在という意味で、そのような形でトレード候補に挙がるのは名誉でもある。

 菅野の場合も移籍とすれば、もちろん戦力として期待されてということになるのだろう。それと同時に、オリオールズの現状もシーズン中に"売り手"になることをサポートする。

 過去2年連続プレーオフに進んだチームは、今季は6月30日現在37勝47敗と苦戦。主砲アンソニー・サンタンダー、エースのコービン・バーンズが抜けた穴を埋められず、このままではプレーオフ進出は難しい。だとすれば、来季以降をにらんでのチームづくりを視野に入れるのは、当然の流れだろう。ダブロフ記者は続ける。

「オリオールズは間違いなく大規模な形でベテラン選手を放出すると思う。現在、チームは勝率5割を大きく下回っている。今後1カ月の間、ドラマチックな形で巻き返し、勝率5割に近づきでもしない限り、売り手に回るだろう。2025年が契約最終年の選手のほとんどが放出候補になるはずで、そのなかにスガノが入ってもまったく驚かない。

 具体的には、野手ではライアン・オハーン(31歳)、セドリック・マリンズ(30歳)が最大のトレード要員。もしかしたら来季はチームオプションのラモン・ロリアノ(30歳)も含まれるかもしれない。先発投手ではザック・エフリン(31歳)、チャーリー・モートン(41歳)、そしてスガノといった実績ある投手たちが放出候補だ。リリーフ投手ではセランソニー・ドミンゲス(30歳)、グレゴリー・ソト(30歳)が注目の存在になると思う。これらのベテランをトレードすれば、それなりの見返りを手にするチャンスがあるに違いない。

 もっとも(次のオフに)"ファイヤーセール(投げ売り)"に取り組むからといって、オリオールズが現在のコアメンバーでの優勝争いをあきらめたわけではない。アドリー・ラッチマン捕手(27歳)、ガナー・ヘンダーソン遊撃手(24歳)のおかげでセンターラインがしっかりしており、二塁手のジャクソン・ホリデー(21歳)がオールスター候補になるほど成長してきたことは好材料だ。

 投手陣にもいい素材がいないわけではない。だからここでベテランを大量放出し、代わりに好選手を獲得しておければ大きい。さらに故障者が復帰し、若手が伸びてくれば、来年にはプレーオフ争いに戻れる可能性が十分にある。

 特に投手陣には、今季後半に何人かの実績ある選手たちが復帰してくる。昨年トミー・ジョン手術を受けたカイル・ブラディッシュ(28歳/2023年12勝7敗、防御率2.83)、タイラー・ウェルズ(30歳)のカムバックは近く、グレイソン・ロドリゲス(25歳)、アルバート・スアレス(35歳)も戻ってくるかもしれない。オリオールズの首脳陣は今後に備え、ケイド・ポビッチ(25歳)、トレバー・ロジャース(27歳)、ブランドン・ヤング(26歳)、チェイス・マクダーモット(26歳)といった20代の投手たちをもっと見ておきたいと思っているに違いない。

 そういった背景を考えれば、35歳の1年契約選手であるスガノが放出候補になる理由も見えてくるはずだ。オリオールズがトレード期限に精力的に動くとしても、"再建(リビルド)"という言葉が相応しいとは思わない。それよりも、チームの"立て直し(リツール)"と捉えたほうがいいと考えている」

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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